芯の奥深いところで自分と向き合う。空手家・清水希容の戦い方 #30UNDER30


進学した東大阪大学敬愛高校は空手の名門校。高校2年生で出場したインターハイが、清水にとっての大きなターニングポイントになった。

気合いを入れて臨んだ女子個人形の結果は3位。しかも、それが原因で高校として全国大会連覇を逃す結果となってしまった。

「とても悔しい思いをしました。負けた後には、技だけではなくて、私自身の性格を変えるくらいの勢いで精神的に自分と内面から向き合いました。この経験は、私の空手人生を変えたきっかけになったと思います。いまでも、壁にぶち当たった時や気持ちが落ち込んだ時には、自分の芯の奥深いところで向き合い、対話することを心がけています」

プレッシャーと戦って結果を残すための精神力、そして、思った通りに体を動かして技を瞬間的に決めるための集中力──。「空手道」の言葉通り、清水は空手の技を通して人間力そのものを磨き続けている。

やっぱり空手に打ち込んでいる瞬間が一番楽しい



目の前のことに全力で精一杯に取り組む性格は、周りから「真面目でストイック」と評される。オリンピックでメダルの期待がかかる清水にとって、日々の稽古も我々の想像を超えるほど厳しいはずだが、清水に「いま一番楽しいこと」を尋ねてみたらこんな答えが返ってきた。

「指導者やサポートしてくださる方々と一緒に、空手に打ち込んでいるときが一番楽しいです。オリンピックに向けてみんなで力を合わせて取り組むこの時間が、とても大事。日々空手の奥深さを少しずつ学ぶことができている実感があり、より自分が成長していける手応えがあるんです」

試合中に見せる凛とした美しい表情は、きっと彼女の本質なのだろう。常に前向きで、周りへの気遣いを忘れず、空手そのものや自分を応援してくれる人々に対する深い愛情がにじみ出る。その内面からの美しさが彼女を輝かせる源泉に違いない。

「空手家でない自分の人生なんて考えられない。私は、どんな道を辿っても、きっと最終的には空手の道を選んでいると思います」

そう語る清水が、オリンピックで表彰台に上る瞬間を見たいと願う人は多いだろう。空手の魅力、そして空手を愛する清水の美しさを世界中の人たちに知ってほしい、と。

「プレッシャーで怖くなるときもありますが、いま目の前にあることすべてが経験であり、自分を成長させるための糧だと信じています。これからも選手として、また空手家として、常に学び成長していけるように努力し続けていきたい」


しみず・きよう◎1993年、大阪生まれ。スピードとキレを武器に、国内はもちろん、世界 大会でも優勝多数。東京五輪でもメダル獲得の期待が高まる。


清水をはじめとした、個性あふれる「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者の一覧はこちらから。若き才能の躍動を見逃すな。

文=松崎美和子 写真=NurPhoto(Getty Images)

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