ビジネス

2019.08.31 10:00

野菜の日に向け善意が拡散。SNS時代の社会貢献とは?


──実際に公開されてからの反応はどうですか?

暖かい反応ばかりで驚いています。普段は何かが当たる懸賞系の投稿をリツイートなさっている方が、自分自身は何ももらえないと解っていながら協力したと仰っており、感動してしまいました。

──炎上しなくてもツイッターでは1件もリツイートされない投稿もあれば数万件のリツイートを集める投稿もあります。反応の大きさが読めない中でどのように稟議を通したのですか?

寄付規模がどれくらいになるかわからなかったので、まず最初に最大値を定めました。全国のこども食堂でどれだけの量を一度に受け入れられるかを、こども食堂に関わっているNPO法人のむすびえ様と議論し、最大件数になった場合の商品代と配送費のトータルコストで社内稟議を通しました。

SNSの特性上、予算を確保しながら想定よりリツイートされないという可能性もあったのですが、できるかぎり規模を拡大できるように、様々な方にご意見をいただき、ツイッターユーザーの方がより気軽に参加できるように投稿の仕方に工夫を凝らしました。

弊社としてはなるべく多く寄付できるように広告出稿も検討しましたが、今回はあくまでカゴメは皆様の社会貢献と、こども食堂を知ってもらえる場の提供役に徹しようということで、見送りました。しかしながらリツイートだけで既に5000を超えるご協力をいただき、カウント対象のハッシュタグ投稿と併せて数万件の寄付が出来る見込みです。

──現在こども食堂の支援を考えている他の企業に対して伝えたいことはありますか?

企業だからこそ出来ることもあると思います。特に企業が大きければ大きいほど社会的インパクトも大きいので、社内的に難しい部分はあるでしょうが前向きに取組んでいただきたいと思います。

その一方で弊社のような企業が単体で出来る限界も感じています。弊社は野菜ジュースの生産は得意ですが、全国への配送はあまり得意ではありません。得意な部分を掛け合わせて、いくつかの企業が連携できると、各社がそれぞれ活動するよりも更に大きな取り組みが実現するでしょう。企業同士が手を取り合ってこども食堂の力になれればと思います。



(取材を終えて)

ツイッターを使った社会貢献。この新しい取組みは一見シンプルだが、その裏には批判を恐れずこども食堂を応援しようとする企業の覚悟があった。企業に覚悟をさせたのはSNSの炎上リスクだったが、取組みを広げたのもまたSNSであった。

善意が連鎖し、企業同士が手を取り合ってこども達の健全な成長を実現することを願わずにいられない。

連載:令和のナイチンゲールたち
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文=秋山宏次郎

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