それは、以下の2つからなる極めてシンプルなものだ。文字通り誰でも、まねて取り入れることができる。
1. 誰かが持っているものを奪う
2. 需要がある何か、またはその何かから作ったものを公開市場で売る
この誰でも使える基本的なビジネスプランについて、しゃくし定規な人たちは間違いなく、英国のコモンロー(慣習法)における「窃盗罪」であり、昔から重罪だったと指摘するだろう。だが、たとえそれが確かだとしても、築かれた富の多くの中心にあるのは、このビジネスプランだ。
寛大な読者の方は皮肉を込めた私のこの表現を、欧州の帝国が植民地から資源を奪ってきたことや、米国の入植者が先住民族の財産権を侵害したことを指したものと考えてくれるかもしれない。実際のところ、歴史に見られるこれらの例は、最高のビジネスモデルの原則を示す良い例だ。
現代の生活にも根付くモデル
最高のビジネスモデルは私たちの生活様式の基盤をなす分野において、現在も取り入れられている。だが、私たちはそのことにほとんど気付いていない。気付くためにはまず、このモデルの1.と2.は、実行する順序を示すものではないことを理解しておく必要がある。
このモデルを採用しているのは、石炭・石油会社だ。その副産物である汚染や大気中の二酸化炭素が、人類全てが共有する「利益」、つまり人間の生活に適した物理的環境の価値を低下させる製品を販売している。ビジネスモデルとしては、次のように考えることができる。
1. 化石燃料を採掘し、汚染と大気中の二酸化炭素という副産物を生み出す製品を公開市場で売る
2. 副産物が共通の利益の価値を損なう
国際通貨基金(IMF)は今年5月、化石燃料を採掘する企業が受け取っている「補助金」は年間およそ5兆ドル(約532兆円)に上ると推計され、着実に増加していると指摘する報告書を発表した。
報告書に示された補助金の半分近くは、「人類が地球上に存在できること」という私たちが共有する利益の価値だと考えられる。石油・石炭会社が、その価値を適切に算出する方法がないというだけの理由で、自ら負担することを避けてきたものだ。