パリ協定を受け、気候変動抑制のカギを握る削減目標を達成する政策を導入しようとしている諸政府は、こうしたロビー活動によって足を引っ張られている。
こうしたロビー活動費の情報開示については、企業は通常、消極的だ。そこで、イギリスの環境NGO「インフルエンス・マップ(InfluenceMap)」 は、入手しうる限りの記録を精査したほか、企業が発するメッセージを徹底的に調査して、各社が気候変動を抑制する取り組みにどのくらい影響を及ぼしているかを評価し、3月22日に報告書を発表した。
反気候変動のロビー活動に注ぎ込んだ金額*が年間5300万ドルと、最も多かったのがBPだ。シェルが4900万ドル、エクソンモービルが4100万ドルと続き、シェブロンとトタルはそれぞれ年間およそ2900万ドルだった。最大手の5社を合わせると、年間1億9500万ドルが支出されているという。
インフルエンス・マップによると、ロビー活動費の一部は、化石燃料の使用に影響を与えうる環境政策に関して、政治家や一般市民に働きかけるという巧妙な取り組みに充てられている。
最近の一例を挙げると、BPは各種のソーシャルメディアチャンネルを通じてメッセージを連係させるなどし、気候変動危機を「二重の」エネルギー課題としてとらえ直すプラットフォームを宣伝していた。
報告書によると、各社は、気候変動抑制の活動を支持する姿勢を匂わせることに的を絞ったブランド戦略に支出している。最も一般的なのが、低炭素に関心を集めさせて、自社は気候変動問題を熟知しているというイメージを売り込みながら、実際の解決策については無視するというやり方だ。
報告書は、そうしたやり方は世間を欺くものだと述べている。各社は実際には石油やガス資源の採取を拡大しており、低炭素プロジェクトに充てているのは資本支出額のわずか3%であるという。
シェルとシェブロンの両社は、報告書の内容は事実ではないと述べ、地球温暖化ガスの削減と気候変動問題への対応に尽力していると強調した。
*2019年現在。「反気候変動のロビー活動」とは、気候変動対策のための政策を遅らせ、コントロールし、阻止するための活動を指す。