そもそもだが、社会通念や慣習を変えるには、以下、三つのステップを経る必要がある(と私は考えている)。
1. アジェンダセット
2. ミニマムスタート
3. スターを生み出す
一つずつ見たい。まず、アジェンダセットとは「みんなが色々意見を言いたくなったり、興味があるような論点をセットすること」だと定義している。例えば、もしも働き方改革が、「雇用改革」という名前だったなら、はっきりいってこんなに世の中で話題にならなかっただろう。
なぜなら「自分とあんまり関係なさそうだから」だ。過去の例でいえば「脳トレ」なども同じ構造だが、なんとなく自分にも関係ありそうな名前というのはとても重要だ。何かを変えるときに必要なのはこの「適切な名前」と「いいアジェンダをセットすること」だ。
次にミニマムスタート、これは文字通り、小さくやってみるということだ。以前、ある一部上場企業の社長と対談させていただいたとき、その社長の話がとても印象的だった。いわく「生産性の改善はいきなりやっても厳しい。だから、まず労働時間を短縮させることから改善していく」と言っていた。つまり、「できることから小さくやろう」ということだ。これがミニマムスタートだ。
ただ、これだけでは、物事は変わらない。
最後の足りないピースが「スターを生み出すこと」だ。例えば、企業の働き方改革であれば、模範的なチーム、模範的な社員などをきちんと表彰し、「この人が次のスターだよ」ということを示すことだ。
人は抽象的な話を聞いただけでは、なかなか動かないし、変化しない。そこで具体的に誰がどう変化をしたのか、何がいいのかを具体例で示すことで、一気にイメージできるようになる。
働き方改革が本当の意味で成功したというためには、この三つ目「スター企業」「スター人事」を輩出することが大事だと思っている。言い換えれば、現状の働き方改革の改善点は、みんなが思う、「働き方改革で成功した企業」がバラバラなことではないか? と思うのだ。
現に(前述した)イベントで登壇したときも、ほとんどの人が「具体的な企業名や事例」を持っていなかった。あるいは持っていてもバラバラだった。つまり「スター」がいないのだ。では、どんなスターが必要なのか? ヒントは漫画にある。
コンテンツは、『ドラゴンボール』からジョジョとワンピースへ
私は普段、IT企業の役員として働きながら、作家としても活動している。その際によく言われるコンテンツ論の中に、「ドラゴンボールからジョジョ。そして、ワンピースへ」という話がある。
これは「強さ」に対する定義の違いがどうやって変化してきたかを表した話で、漫画『ドラゴンボール』はよく言われるように、「強さが画一的なもの」である。強さは一軸で、スカウターで測ることができる。スカウターのスコアで出た1000は100より強いし、100万は1万より強い。強さが一軸なのだ。