しかしその胎動は、遡って1997年頃から始まっていた。そしてそこには、まったく知られていない物語の数々があった。
連載「アマゾン ジャパンができるまで」では、創業メンバーたちの証言で、その知られざるストーリーを公開している。今回はこの連載について、第6回、第7回(8月30日公開)に登場する「アマゾン ジャパン社員番号4」、曽根康司氏に寄稿いたただいた。
Forbes JAPAN独占連載「アマゾン ジャパンができるまで」の第3回、「ビットバレー、ジェフ・ベゾスの『口癖』」に、ファウンダーの一人、西野伸一郎氏と自分が出会った頃の話が出ていた。
ビットバレー、ニコラス・ネグロポンテなど20世紀の懐かしいキーワードや貴重な写真も含まれているが、20年経った「イノベーションの入口」である今こそ、懐古主義でなく、未来志向でお読みいただければと思う。
今回は「Get Big Fast(ゲット・ビッグ・ファスト)」「Under Promise Over Deliver(控えめに約束して期待を超える)」「Customer Centric(地球上で最もお客様を大切にする企業)」とアマゾンを象徴するキーワードがいくつか出てくるが、やはり一番重要なのは一番最後の「Customer Centric」ではないかと思う。
アマゾンでは顧客サービスを重視する会社でもある。連載の第1回に出てくる「受注100万人目達成。カスタマーは日本人」の例では、ジェフ・ベゾスが100万人目の顧客がいる日本まで自ら商品を届けにいったサプライズが引き合いに出されているが、顧客サービスに対する高い評判は、新たな顧客を創出することにも密接に関係している。
言い換えれば、「Customer Acquisition Cost」(CAC:顧客獲得コスト)と「Customer Relationship Cost」(CRM Cost:顧客関係管理コスト)を同等に扱うというわけなのだが、これは、顧客数(ユーザー)の増加が企業成長のメルクマールとなっている現代のビジネスにおいて、なかなか難しいことだ。
当時、自分は恥ずかしながらまったく理解していなかったが、ジェフ・ベゾスの目には「顧客獲得コスト」と「顧客関係管理コスト」は境目のないコストとして認識されていたのだろう。だからこそ両コストはともに顧客獲得のために投下されていた。そして、その考えはザッポスのトニー・シェイに引き継がれていくことにもなった。
アマゾンのクレドの1つに「Work hard, Have fun, Make history!」というのがあるが、この連載についてはこう言いたい。
「Read it, Have fun, Remember History!(読んで、楽しんで、歴史をたぐってください!)」
曽根康司◎株式会社キャリアインデックス執行役員、社長室長。慶應義塾大学法学部政治学科卒。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程EMBAプログラム在学中。「焼肉探究集団ヤキニクエスト」メンバーでもある。