宇宙で料理ができれば、「食の進化」が巻き起こる
もともと自分は、みんなが右に行くと言ったら左に行く天邪鬼なタイプです。無意識のうちに、まだ人が手をつけていない部分を探しているのかもしれませんね。
よく「クリエイティブな会社入りたい」という人がいますが、クリエイティブな会社というのはすでにクリエイティブな部分が開発し尽くされていて、実はクリエイティブなことがいちばんできない場所である可能性が高い。反対に、まったくクリエイティブやイノベーションから遠そうな会社ほど、実は自分のクリエイティビティが発揮しやすい場所かもしれません。人がまだ開拓していない部分にこそ、自分が輝ける可能性があるものです。
だから、若い時には、興味のあることはすべてやってみるのがいいのではないでしょうか。これからは、ジャンルや分野も関係ない世の中になるでしょう。これまで仕切られていた分野という壁と壁の隙間にこそ、進化の余地があるはず。だから、一分野の専門職でいることにこだわらず、いろいろなものを融合しながら新しい未来をつくっていける感覚でいてほしいですね。つなげられる「点」は多い方がいいのです。
僕自身も、レストランの常識を飛び出して、宇宙で料理をつくってみたいと本気で考えています。これから間違いなくやってくる宇宙時代には、人類にとって新しい「食の進化」が必ず起きるはず。食の進化は、人間の身体にも変化をもたらすでしょう。宇宙と食という「点」は、これまで結び付けられることはなかったかもしれませんが、そこにたくさんの可能性とチャンスが広がっていると考えます。
だってせっかく月に行ったのに、食べたのがチューブの宇宙食だなんてもったいないじゃないですか。それだったら、僕たちが宇宙に行ってこれまでにない料理をして、みなさんに喜んでもらいたい。これからも自分の美意識を信じて、「食」を通して人類の幸せに貢献してきたいと考えています。
よねだ・はじめ◎1972年大阪生まれ。「HAJIME」オーナーシェフ。近畿大学理工学部卒業後、コンピューターエンジニアを経て料理界へ。フランスで修業を積んだのち独立。2008年に「Hajime RESTAURANT GASTRONOMIQUE OSAKA JAPON」をオープンする。高い技術で美意識が具現化された革新的な創作が高く評価され、独立してから1年5カ月という世界最短でミシュランの三つ星を獲得した。2012年には店名を「HAJIME」に変更。「Foodie Top 100 Restaurants」、「Asia’s 50 Best Restaurant」、世界を代表する100人のシェフ「100 chefs au monde」など、世界の権威あるランキングに名を連ねる。
米田 肇が「フード部門」のアドバイザリーボードとして参加した「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者は、8月23日に特設サイト上で発表。世界を変える30歳未満30人の日本人のインタビューを随時公開する。
昨年受賞者、「スーパーオーガニズム」でボーカルをつとめる野口オロノや、昨年7月にヤフーへの連結子会社化を発表した、レシビ動画「クラシル」を運営するdelyの代表取締役・堀江裕介に続くのは誰だ──。