ビジネス

2019.08.07

クリエイティブを「投資」して、スタートアップを支援する。僕らが異色のVCを始めようと思った理由

(左)共同創業者の梅田哲矢 (右)共同創業者の佐々木芳幸


「シード段階のスタートアップのマーケティング予算は限られている。目の前に正当な対価がある大企業と比較すると、どうしても大企業を選んでしまう。スタートアップを選択する仕組みが必要だなと感じていた」(梅田)。

例えば、現在ユニコーン企業として世界に羽ばたいているメルカリ。同社が創業したタイミングから仕事をしていれば、「社会を変えていく大きなダイナミズムを感じたかもしれない」と振り返る。

意思決定の精度を高める「右腕」のような存在に

既存の大手広告代理店系のファンドとの違いについても「同じように大手広告代理店でもストック・オプションを報酬とするファンドが立ち上がっている。ただ、クリエイターたちは、キャッシュの仕事も請け負っている。それでは中途半端で、結局キャッシュ仕事が多くなってしまう。僕らの特色はキャッシュ仕事は全く受けない点にある。ストック・オプションのみに絞るからこそ、この新しいモデルがはじめてワークしていくのだと思っています。走るしかない状況に追い込むことで、成功確率を上げていくという覚悟です」(梅田)と説明する。ストック・オプションを得ることで、スタートアップの一時的なサポートにとどまらず、成長に向け併走していく新しいクリエイター像を期待させる。

このビジネスをすでに1年以上前から個人単位で進めてきており、その結果を踏まえてビジネスモデルもブラッシュアップを続けている。実際にやってみて痛感したのは「スタートアップにはスピード感が何より重要だということ。一週間かけたパワーポイントより、毎日のメッセ。提案より、併走。また広告代理店のクリエイターのスキルは、スタートアップを支援するための非常に有益であるということ」と梅田は言う。



11名のメンバーの多くが、1986~87年生まれだ。佐々木は「たとえば、広告代理店系のファンドは、大人力が強すぎて機動力がない。僕らは大人力と若者力、機動力が備わっている世代なので幅広い視点で戦略をアドバイスできる。また、スタートアップの経営者も同世代が多いので、共に機動力を念頭においた意思決定ができるのではないか」と経営者との距離の近さを語る。一方で梅田は課題についても言及する。

「捉えどころがない世の中で、経営者はどう意思決定をすれば良いか難しい。どういう世の中なのかがわかる専門家として僕らはサポートできる。それは勘ではなく、僕らにはそれなりの経験があるので意思決定の精度が高くなる。無駄な失敗が減る」(梅田)

また梅田は「ベテランのクリエイティブディレクターからすれば、まだまだもっと経験を積むべきだと思われてしまうかもしれない。

しかし、重要なのはプロフェッショナルであるプレイヤーである今やるべきだと感じている。そのクリエイティビティを何に使うかと考えたとき、これまで培ってきたスキルと世の中に感覚が絶妙にバランスされた今こそ、スタートアップの大きな成長に貢献できると考えている」と今後の抱負を語った。

文=本多カツヒロ、写真=小田駿一

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