今回、運輸省は、英国の地方議会が数多く参画する幹線道路の開発・管理団体「LCRIG」(Local Condition Roads Innovation Group)と緊密な協力関係を築き道路状況の分析を実施する。
サービスを提供するのは、ノースヨークシャー州に拠点を構える企業Gaistだ。同社は、幹線道路の調査を専門に行う企業で、同プロジェクトでは全国のデータバンクなどから1億4600万個以上の高画質な道路画像データを収集。機械学習で状況を分析していくとしている。
道路の状態分析となるといろいろな作業が予想できるが、同プロジェクトがまず画像認識AIを用いてチェックしようとしているのは、路面に描かれた標識の正確性や状態だ。運輸省の関係者は、自転車・自動車問わず、運転者にとって路面に描かれた標識が曖昧だと、駐車禁止や車線の区別などが分かりづらく、安全面にも支障があると指摘。プロジェクトを通じて改善していくとしている。
日本での道路管理は?
人工知能を使って道路状態を診断するサービスを展開している企業としては、米国のRoadBoticsもある。従来、道路の状態診断は、多くのインフラのそれと同じように職員が目視で行ってきた。日本も米国も、状況は酷似しているのではないだろうか。RoadBoticsでは、スマートフォンカメラで撮影したデータをクラウド上でAIに解析させるのだが、画像収集に際しては、道路清掃業者やデリバリー業者など提携・協力しているというのも特徴のひとつとなっている。
日本では、RoadBoticsとほぼ同様のコンセプトを持った「舗装損傷診断システム」を、NECと道路関連インフラメーカー福田道路が共同開発している。ビデオカメラで取得した画像とAIを使って、ひび割れ・アスファルトの劣化レベルを評価するというものだ。また、NTTコムウェアの「AI道路不具合検出システム」も、道路問題におけるAI利活用事例のひとつになるだろう。
「インフラや道路などの破損、老朽化をAIでチェックするのは非常に難しい。画像データだと、光の差し込み具合などによって誤認識を引き起こす場合もある。まだまだ人間の目が最も高いパフォーマンスを発揮する分野。今後、精度の高い新たな自動化サービスが望まれる」(インフラ点検業務関係者)
AIによる画像認識は人間の認識率を上回ったとされているが、道路などインフラを診断する技術の精度はどこまで高まっているのだろうか。日本の道路の「高齢化」が課題となって久しいなか、続報が気になるところである。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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