数字に敏感になったら比較をさせる
ここまで数字に敏感になってくると、次に訪れるのは「比較したがる」という段階だ。たとえば、筆者が家で野球を見ていると、テレビには点数が表示されている。すると、「こっちのチームが5点で、こっちのチームは3点だから、お父さんの好きなチームが勝ってる」といった具合だ。それ以外にも、「私は6歳で、妹は3歳だから、私の方がおねぇちゃん」というように、数字の大小に着目して比較をする。
こうなってくると、金融教育を始めるタイミングとしては最高なのではないかと考える。といっても、決して教科書を買って詰め込み式の勉強をさせるのではない。
一緒に新聞に入っている広告を見ながら、「あの店の方が安い」とか、「先週よりもキュウリの値段が高くなっている」などの数字の変化を一緒に発見していく。実際に家の周辺のスーパーやコンビニを巡って、実際のモノと値札を見ながら、値段の違いや大きさの違いなども実感させることも重要だろう。
実際にモノの値段の比較をし始めると、そのうち1つの疑問が湧いてくるのだ。それは、「なんで値段に差が生じるのか?」という疑問だ。
市場の原理はこの時点で学べる
極端かもしれないが、実例を1つ挙げよう。現在、筆者の娘たちは大好きなテレビアニメのキャラクターがプリントされている箸を使っているが、その値段は1つ500円ぐらいだった。しかし、その箸自体は特に高価な素材が使われているわけでもなく、正直100円均一にも同じような箸は売っている。もちろん、100円均一の箸にはキャラクターはプリントされていないが、違いはそれだけだ。
娘たちは両方の値段を知っているために、なんでこんなに値段の差があるんだろうとは思う一方で、やっぱりこのキャラクターは可愛いから、値段が高くても仕方がないというように、なんとなく値段の差の理由は理解している。
しかし、このキャラクターがプリントされることによって上昇した値段分こそが「付加価値」と呼ばれるものである。筆者は金融教育とは経済学と会計がベースにあるべきと唱え続けているが、この付加価値を国家レベルで考えていけば国内総生産(GDP)の理解に繋がっていく。まさにマクロ経済を学ぶ第一歩だ。
また、テレビアニメのキャラクターは1クールごとに世代が変わっていく。そうすると、新しいキャラクターが出てくると、そのキャラクターがプリントされている箸は500円で売り出され、一世代前のキャラクターがプリントされた箸は300円などに値下げされてガレージセールになる。
この値段の変化という現象からも学ぶことが多い。たとえば、元々500円で売られたものが、品質自体には何も問題がないのに値段が下げられている理由。これは、子ども達はいまテレビで放映されているアニメのキャラクターがプリントされている箸が欲しい訳であって、過去のキャラクターがプリントされた箸にはそれほどの価値を感じなくなったから値段が下がった訳だ。これはまさに需要と供給のバランスによって価格が変動したことになり、まさにミクロ経済学の第一歩だ。
このようなかたちで、子どもが数字に敏感になった段階で、積極的に値段の変化を見せていくことで、とても深い金融教育を子どもに施すことが出来るのではなかろうか。