マスクが立ち上げたスタートアップ「Neuralink(ニューラリンク)」は、人間が脳から直接コンピュータを操作する技術を開発し、2020年末にも臨床試験を開始したい意向だ。このテクノロジーは、脳疾患の治療にも活用できる見込みという。
マスクはNeuralinkを2017年にアナウンスしていたが、これまでその詳細はほとんど知らされてこなかった。
「究極的には、完全な脳直結型のインターフェースを実現する」とマスクは述べた。Neuralinkの開発チームは今後、ロボティクスやニューロサイエンス分野の新たな人材を獲得し、この技術を磨き上げる計画だ。
彼らは髪の毛よりも細い、直径4~6マイクロメートルのマイクロチップを開発し、人間の脳に埋め込もうとしている。Neuralinkはこのチップを埋め込む作業を行うロボットの開発も進めている。脳に直接、信号を送り込むことで脳機能を改善し、アルツハイマー病などの治療に役立てることも計画中だ。
Neuralinkのデバイスは複数のスレッド(糸)で構成され、脳の特定の位置に信号を送り込む。さらに、センサーで取得した脳内のデータが、耳の後ろに装着したデバイスに送られ、モバイルアプリなどで制御可能になるという。
このデバイスを用いれば、現状で米国の当局から認可を受けている脳インプラントデバイスの10倍の容量の、脳内のデータが取得可能になるという。
マスクはこのデバイスでまず、脳でスマートフォンなどをコントロール可能にし、ロボットアームなどを、脳信号で操作することを目指している。さらに、脳機能の拡張手術を、現在のレーシック手術ほどの手軽さで実現する計画だ。ただし、Neuralinkのデバイスが実現するのは、まだかなり先になると彼は述べた。
「世間の大半の人々は、このテクノロジーをまだ理解できないだろう。実用化に向けてはかなり長い時間が必要になる。Neuralinkのデバイスが、人々の脳をコントロール可能になるのはまだ先の話だ。しかし、この技術は現実のものになる」とマスクは話した。
ほとんど奇跡にも思えるNeuralinkの実現に向けてのスケジュールは、明らかにされていない。ただし、これまで数多くのイノベーションを実現させてきたマスクは、このテクノロジーに自信を抱いているようだ。