空港で無料SIMカードを外国人に配りまくる。わくわくするロジック

WAmazing代表取締役CEO・加藤史子


訪日外国人の97%は空港から入国します。日本で国際空港か国際航空便が定期就航している空港は当時29。この29空港をおさえれば、97%の人に効率よくリーチできる。では、空港で何を配れば喜ばれるのか。当時、日本はフリーのWi-Fiが少なく不便だと外国人観光客に言われていましたが、日本のモバイルデータ通信はWi-Fiよりもカバー率が圧倒的に高く便利だった。そこで、モバイルデータ通信のSIMカードを配布することにしました。

──当時は自動販売機型の機械でSIMカードを配るのは珍しかったようです。

調べると、格安航空会社(LCC)が航空業界を大きく変革していて、深夜の2時や3時に到着する便がけっこうありました。この人手不足の時代に24時間の有人カウンター運営は、コストが合わない。絶対に無人で自動で渡す必要があると思いました。

WAmazingの機械は中古のタバコの自動販売機を改造し、100万円ぐらいでつくっています。自販機改造業の会社に話を聞きに行くと、最初は飲料用の自販機を勧められました。日本で最もポピュラーだからですね。でも、飲料用だとペットボトルや缶の形状にSIMカードを入れるのが困難で、機械に入る数も少ない。冷蔵機能もあるので、キンキンに冷えたSIMカードが出てきてしまう(笑)。そこでタバコの自販機にしました。

しかし、タバコの自販機に、普通にSIMカードの箱を詰めると、タバコの箱より軽すぎるため、うまく出てこない。そこで重くするためにマニュアルを同封したりしました。そういう試行錯誤は楽しかったですね。

──まさに、わくわくする瞬間ですね。

世の中にまだないけれど、「これは絶対いけるに違いない」と思った仮説を作っている最中、そしてそれを実行している時が一番わくわくしますね。ベンチャーはきちんとビジネスとして成立する前までは壮大な社会実験みたいなものだと思います。仮説を立てて実行して、その結果が出るか、出ないかは神のみぞ知る、結果が出なければアプローチを変えて再度チャレンジするというのがすごく面白い。
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構成=成相通子 イラストレーション=Willa Gebbie

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