サッカーが持つ魅力について尋ねると、彼は微笑みながらこう語った。その表情はまるで童心に帰ったかのよう。彼の名はサム・デイビー。2002年〜2008年の間、アップルでスティーブ・ジョブズと共に働いた経験を持つ。
その後、メルボルン発のバッグブランド「Crumpler(クランプラー)」で働いた後、2015年9月にソーシャルサッカーブランド「PARK(パーク)」を立ち上げた。
同ブランドはTシャツや帽子といったアパレル商品のほか、サッカーボールも販売している。特徴的なのが「Pass-A-Ball Project」というプロジェクトを展開している点だ。
このプロジェクトはサッカーボールをひとつ購入すると、恵まれない環境にある子どもたちに、同じ型のサッカーボールが届けられるというもの。PARKのサイトによれば、すでに23カ国で7万5000人の子どもたちに、7663個以上のボールが届けられているという。
立ち上げから約4年。今年はユニクロとコラボし、「FIFA女子ワールドカップ2019」の開催を記念したTシャツをフランスで販売。そのほか、プロサッカー選手の本田圭佑から資金調達(金額は非公表)もするなど、ビジネスの規模を拡大している。
提供:KSK Angel Fund
アップルでの仕事を経て、なぜサッカーブランドだったのか。今回、本田圭佑の個人投資ファンド「KSK Angel Fund」の投資先などが一堂に会するイベント「KSK Summit」の開催に際し、来日中だったサム・デイビーに「PARK」に懸ける思いを聞いた。
ジョブズとの会話から数年を経て始動したプロジェクト
──なぜ、ソーシャルサッカーブランドを立ち上げようと思ったのでしょうか?
まず、僕がサッカーを好きであること。これが立ち上げの大きなモチベーションとなりました。単純なサッカーブランドではなく、ソーシャルサッカーブランドを立ち上げようと思った原点は、アップル時代にスティーブ・ジョブズと交わした会話にあります。
当時、スティーブと一緒に「世の中に善なることを」というプロジェクトを立ち上げる準備をしていました。ただ、途中でスティーブがすい臓がんを患ってしまい……。結果的に、そのプロジェクトはクローズすることになりました。彼が2011年に亡くなってから、数年、ずっと心のどこかに、このプロジェクトのことが残っていて。