Black & Abroadの共同創業者であるエリック・マーティンは、「アフリカへ帰れ」というヘイトスピーチが、アフリカ人種にとっての「美しいアフリカへ旅に出よう」というものになればという思いを形にしたのだという。いわば逆転の発想で、「ヘイトスピーチ」を「観光キャンペーン」に変えてしまったのだ。
このキャンペーンで同社は、この6月に行われた世界的なクリエイティビティフェスティバル「カンヌライオンズ」で、429のエントリーがあったクリエイティブデータ部門でグランプリを受賞した。
審査員長の佐々木康晴は、事前のForbes JAPANの取材に対して、「クリエイティブデータ部門では、データとクリエイティビティを融合させて、今まで見たことがないようなやり方で人を動かすことができたかという視点で受賞作品を選ぶ」と語っていたが、それにふさわしい作品がグランプリを受賞したわけだ。
ヘイトスピーチの抑止には政治の力が必要だ。しかし、それをアイデアとデータの力で逆転して、このようにビジネスにも結びつけることができる。消費者を驚かせ、ヘイトスピーチからは生まれない人の感情を生み出した「Black & Abroad」のキャンペーンは、まさにそれを示したのだ。