デイサービスでハイヒールを履くイギリス人女性に、長寿社会のビジネスチャンスを見た

(BSIP/UIG /by Getty Images)


介護施設では、洗いやすさや介護のしやすさを最優先した結果、昼も夜も同じような服装で過ごしていることも多い。そこで入居されている高齢者に季節感やハレの日を感じてもらいたいと思い、介護関連商品を開発している企業の支援を受け、大学と連携し立ち上げたのがこの企画だ。

ファッションを学ぶ大学生が「ユニバーサルデザイン」を学ぶ授業の一環として参加し、100着を超える色とりどりの洋服の中から、一人一人の高齢者に似合うカラーや柄をコーディネートする。ファーやレースのストール、大きな花柄など施設ではあまり目にしない素材や色合いだが、着脱しやすいように学生たちがリフォームしたり、車椅子でも履きやすいラップスカートなどを制作したりしてくれている。

ほとんどの学生は、介護施設に行くのは初めてだ。それでも自分が学ぶファッションという領域での関わりならば、彼女たちも得意分野を活かして自信を持って高齢者に声をかけることができる。

福祉や医療を学ぶ学生ではない彼女たちが、学生時代に介護の現場で直接高齢者と接し、生活を感じることは極めて重要だ。これからの日本社会においての顧客は、シニア層である。高齢者向けのサービスや製品の開発に携わることも増えてくるだろう。彼女たちが、いつか安全で素敵なハイヒールを開発してくれることを願っている。

10年前の10月、曇り空ばかりのイギリスで、珍しいほど晴れた日ばかりが続いていた。真っ青な空の下、訪れた老人ホームのお庭で何人もの素敵なマダムたちに「Lovely day, isn’t it?」と話しかけられた。

イギリスではniceとか、beautifulとか言った意味で「lovely」を多用する。私は初めての海外研修で出会ったイギリスの高齢者たちから、「lovely」に自分らしく生きることを教えてもらった。

今の日本は、もっと素敵に、年を取ることを楽しめるような成熟した社会に変わっていく過渡期なのかもしれない。高齢化率世界NO1である我が国でこれから開発されるサービスや商品が、世界中の高齢者の笑顔を生み出していくに違いない。それこそが、ものづくり・おもてなしの国、日本ではないか。

高齢化の課題を嘆くことなく、チャンスと捉え、新たな可能性に目を向けていきたい。

連載:岩岡ひとみのBeauty & Society
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文=岩岡ひとみ

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