「何も与えず、自分で得ることを学ばせた」 女性起業家の母の子育て論

エスター・ウォジスキとランドール・レイン

ニューヨークで6月17日から開催されたフォーブスの女性サミット「Forbes Women’s Summit」には各界の女性起業家らが集結した。カンファレンスでは子育てに関する興味深い議論も交わされた。
 
なかでも注目を浴びたのが、「シリコンバレーのゴッドマザー」と呼ばれる、エスター・ウォジスキの発言だ。彼女はユーチューブCEOのスーザン・ウォジスキと、バイオテクノロジー企業「23andMe」CEOのアン・ウォジスキの2名の女性起業家を育てあげた。
 
「子供たちに自分が与えられなかった物の全てを与えようと考える人もいる。でも、それが正しいかどうか、よく考えてみるべきだ」とエスターは話した。
 
現在77歳のエスターは、スーザンとアンの2人に加え、カリフォルニア大学の医学部教授を務めるジャネットを含む三姉妹の母親だ。エスターの教育論の根底に流れるのは、独立心やクリティカルシンキングを養い、子供が本当にやりたいことを自分の力でやらせるという考え方だ。
 
「私は娘たちが幼い頃、何も与えなかった。それよりも、自分自身で何かを得ることを学ばせた」とエスターは話した。
 
彼女の教育哲学はTRICKという略語に集約される。トラスト(信頼)のTとリスペクトのR、インディペンデンスのI、コラボレーションのC、それに人を思いやるカインドネスのKだ。娘たちには幼少期から独立心を叩き込み、自分で稼いだお金を好きなように使わせたという。
 
姉妹が最初に起業家精神を発揮したのは5、6歳の頃だった。自宅の裏庭のレモンの木から獲ったレモンを、彼女たちは近所の人たちに売り始め「レモンガールズ」と呼ばれるようになった。そして大人になると、男性優位社会であるテクノロジーや金融の分野で、イノベーションを起こす女性起業家になった。
 
長女のスーザンはグーグルの16番目の社員になり、その後ユーチューブのCEOになった。ジャネットはフルブライト奨学金を得てスイスの大学で学び、ザンビアでも長い期間を過ごした。アンはウォールストリートに勤務した後、23andMeを起業し、昨年7月には3億ドルを調達し、新薬の開発に向けて動いている。
 
エスターの両親は1930年代にニューヨークに移民したロシア系ユダヤ人で、大学は出ておらず、父親は墓石職人だった。中学1年生の頃に教育の重要性に気づいた彼女は、カリフォルニア大学バークレー校に進み、ジャーナリズムの学位を取得した。エスターはパロアルトハイスクールのメディアプログラムを創立した、教育界の著名人でもある。
 
彼女が今年5月に刊行した書籍「How to Raise Successful People(成功する人たちを育てる方法)」は現在、米アマゾンの子育て関連書籍ランキングで19位に入っている。

編集=上田裕資

ForbesBrandVoice

人気記事