「失速することなく、上へ」久保建英の言葉から感じられた強固なプロ意識

久保建英(Photo by Tom Dulat - FIFA/FIFA via Getty Images)


興奮や緊張とは対極にある、余裕と平常心に満ちあふれた胸中を明かした久保は、国際サッカー連盟が主催する年代別の世界大会へ向けた抱負をこんな言葉を介して表している。
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「基準を作ってしまうと、それよりも上に行くことがあまりないと思うので。なので、上の基準は作らずに、最低限のそれをみなさんが見ていて楽しいと思えるプレーに置きながら、チームの勝利に貢献したい。具体的には誰が見ても『あっ、すごいな』と思えるプレーというか。たとえばドリブルならば相手にボールを奪われないことが大前提で、なおかつ相手に嫌がられるコースを進むことですね」

クラブ側もJ3に次ぐステップとして、YBCルヴァンカップでプレーさせるタイミングを計る。照準は高校が休みとなることで午前中に行われるトップチームの練習にも参加でき、周囲とのコンビネーションも築きあげることができるゴールデンウイーク中に定められた。

「現時点で他の同年代の選手たちよりも、自分は半歩ぐらい前に出られているのかなと思う。ただ、スタートが早いだけではなくて、失速することなく、このままどんどん上へ行きたい」
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ホームの味の素スタジアムで2017年5月3日に行われた、北海道コンサドーレ札幌とのグループリーグ第4節。後半21分からピッチに立ち、トップチームの一員として初めてプレーした久保は試合後に残した言葉通りに、約半年後の11月1日に16歳にしてプロ契約を勝ち取っている。

直前にインドで開催されたFIFA・U-17ワールドカップを、久保はエースとして戦っていた。優勝したU-17イングランド代表をはじめとする同世代の上を目指す姿勢に感化されただけでなく、現状に対する危機感を募らせたからこそ、日本国内における最高峰の戦いに挑む決意を固めた。

「ずっとサッカーをやってきた姿勢が、プロになったからとか、ある程度成功したからといって変わってしまえば、いままでの成長スピードも落ちてしまうんじゃないか。そう考えただけで怖くなりますけど、だからこそ楽しくサッカーができているうちはどんどん上へあがっていけると思っています。そういう状態ができるだけ長くというか、いつまでも続いてほしいと思っています」

プロ契約を結んだ直後に通信制の高校へ転校。トップチームの練習や遠征、開幕前のキャンプなどに心おきなくフル参加できる状況を整えた久保は将来を見越し、ほぼ完璧にマスターしているスペイン語に続いて英語も習得したいと明言。そのうえでプロとしての心得をこう続けている。

「特に騒がれたいというわけではないんですけど、いい結果やいいニュースを提供していくことで、クラブの価値や個人の価値をあげて、結果として少しでもいいからサッカーそのものの価値も、微力ながら上げていくことに貢献できたらいいかなと思っています」

今シーズンの前半にFC東京で遂げた覚醒とも言える急成長。歴代で2位の若さとなる18歳5日でのフル代表デビュー。そして、日本のファンやサポーターだけでなく、世界中を仰天させた世界一のビッグクラブ、レアル・マドリードへの電撃移籍。帰国後に刻まれてきた久保の語録をあらためて振り返れば、すべてがブレることなくいま現在へとつながっていることがわかる。

そして、開幕前のキャンプからプロとして臨んだ2018シーズン。試行錯誤を繰り返しながら迎えた夏場に下した決断が、結果として久保のなかで化学反応を起こすきっかけとなった。(後編に続く)

連載;THE TRUTH
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文=藤江直人

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