「失速することなく、上へ」久保建英の言葉から感じられた強固なプロ意識

久保建英(Photo by Tom Dulat - FIFA/FIFA via Getty Images)


そして、久保の肉声を聞くのも実は長野戦後が初めてだった。入団テストに合格し、10歳の夏に加入したスペインの名門、FCバルセロナの下部組織で将来を嘱望されていた久保が志し半ばで帰国。FC東京の下部組織に加入したのは、14歳になる直前の2015年5月だった。
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帰国するまでの約2年間にわたって、久保は公式戦に出場できない状態が続いていた。国際移籍で原則禁止されている18歳未満の外国籍選手を獲得・登録していたとして、久保を含めた複数の下部組織所属選手が、国際サッカー連盟(FIFA)からペナルティーを科されていたからだ。

複雑な問題で退団を余儀なくされた経緯。スペインの名門クラブ帰りという肩書きで、図らずも注目される存在感。多感な年代という点も考慮したFC東京側は、下部組織が臨む公式戦後などにおける久保への取材を許可しなかった。その理由をこう説明してきた。

「注目していただけることは非常に嬉しいのですが、FC東京としては決して久保選手が特別扱いされることなく、他の選手たちと同じ土俵で、同じ目標へ向かって成長していってほしいと考えています」
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もっとも、プロの舞台に立てば事情も変わる。ゆえに2016年11月の長野戦にはメディアが集結したわけだが、久保が発した言葉のなかにはいまも変わらない、現役でプレーする間は貫かれていく信念が含まれていた。デビューを「ちょっと早かったかな」とはにかみながら、久保はこう続けている。

「自分が成長し続けるために大切なのは、やっぱり気持ちですね。具体的には貪欲さというか、上にはさらに上がいるということですね。まだまだ自分は下にいるので、どんどん追い越せていけるように、という気持ちを抱きながら毎日をすごしています」

都内の全日制高校へ進学した2017年春。引き続きFC東京U-18に所属し、トップチームに2種登録された久保の主戦場はJ3に置かれた。高校生レベルは卒業したというクラブ側の判断のもとで、常に貪欲さを出させ、追いつき、追い越す目標をもたせるための英才プランでもあった。

そして、4月15日のセレッソ大阪U-23との明治安田生命J3リーグ第5節で、待望の初ゴールをゲットした成長ぶりが認められたのだろう。5月下旬から韓国で開催されたFIFA・U-20ワールドカップに臨むU-20日本代表に、何と15歳にして大抜擢された。

「サッカーはある意味で、運が味方するかしないかのスポーツだと思っています。ここまで何度か運を味方につけてきた結果、自分はここにいる。注目度が高い大会で結果を残せば、またこちらに運が向いてくると思っているので、全力で戦ってきたい」
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文=藤江直人

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