ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

タンパベイ・レイズの選手たち(Getty Images)

メジャーリーグ(MLB)のタンパベイ・レイズに、野球経験のないコーチが登場、大活躍して注目を集めている。ジョナサン・エリックマンというカナダ人のコーチで、その役職は「解析コーチ」だ。

MLBのウェブサイトにいけば、その正式なプロフィールも見ることができるが、彼はアイビーリーグのプリンストン大学で数学を専攻したデータ解析の天才で、カナダのお家芸でもあるホッケーの選手だった(彼のいとこはホッケーのプロリーグNHLのキングスなどで15年も活躍した選手)。

エリックマン解析コーチは、5歳の時にTボール(ゴムの棒の上に静止しているボールを置いて打つ野球)をやったのが野球らしいものの最後で、本人はグローブを所有したことさえない。

しかし、彼はケビン・キャッシュ監督に直接仕え、データ解析をもとに示唆を与える責任を負っている。さらに練習方法にまでも助言を与え、そのフィードバックを選手やコーチからもらい、それをまた進化させて助言する。

経験や勘より「統計解析」

実は、彼は、レイズの球団職員として、去年まで類似の仕事を6年もやってきた。トロント・ブルージェイズでインターンをやったことを皮切りに、2013年にレイズにリクルートされた。2017年と18年の2年間は、球団事務所でディレクターポジションを得ている。

そして、今年、いよいよコーチとして球場に登場することになった。いま、タンパベイ・レイズは、ニューヨーク・ヤンキースとともに、リーグの首位を争って善戦しているが、97番の背番号をつけたエリックマンは、常にダグアウトのいちばん前に陣取り、試合を注視しながら、監督に助言をしている。


ジョナサン・エリックマン

読者もよくご存じの通り、伝統的な「経験」や「勘」に頼る球団運営から、データ分析を用いて有望選手をリクルートする「統計解析」が野球の現場に持ち込まれるきっかけは、オークランド・アスレチックスをモデルにした映画「マネーボール」によく描かれている。

アスレチックスのゼネラルマネージャーに就任したビリー・ビーンが、イエール大学出の統計に強い若い職員ピーター・ブランドと一緒に、「セイバーメトリクス」を用いて選手の能力を分析し、チームを飛躍的に強くするというストーリーだ。

さらに、この流れは強化され、ヒューストン・アストロズのゼネラルマネージャー、ジェフ・ルーノウへと続く。工学士であるルーノウは、世界最大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーの出身で、野球経験はないが、経営学の分析を活用し、マイナーリーグからの選手補強をドラスティックに変えて、弱小アストロズを、2017年のワールドシリーズでは優勝にまで導いた。

文=長野慶太

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい