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2019.05.25 10:30

ピロリ菌検査で中学生に抗生剤を処方する是非を考える

Visoot Uthairam/Getty Images


胃がん対策の基本はピロリ菌対策だ。ピロリ菌の感染を防げば、胃がんはなくなる。仮に感染していたとしても、抗生物質が効くため、早期に除菌すればリスクは減る。
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胃がんを撲滅するため、ピロリ菌対策の強化を訴えている医師たちがいる。それが水野靖大医師をはじめとした横須賀市および横須賀市医師会だ。

現在、彼らは市内の中学2年生を対象に胃がん検診の準備を進めている。

この施策のポイントは中学2年生を対象にすることだ。現在、胃がん検診の対象は50歳以上。50歳だとおよそ5割、70歳以上だと8割以上の人がピロリ菌に感染している。
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彼らに対する除菌の効果は限定的だ。それは、ピロリ菌は幼少時に感染するため、高齢者になってピロリ菌の感染を確認した時点で、すでに長年にわたって胃粘膜が障害されているからだ。除菌しても胃がんのリスクは残る。

だからこそ、水野医師たちは、ピロリ菌に感染していても、胃粘膜のダメージが少ない中学生に注目した。

中学2年生は義務教育期間で全員に受診を勧めることができる。受験を控えた中学3年生と異なり、時間的な余裕もある。幸い、1970年以降、14歳以下の胃がんは報告されていない。遅すぎるということもないだろう。

横須賀市は、より多くの中学生に受診して貰うため、ピロリ菌感染の診断法に変更を加えた。血液検査を省き、尿検査でスクリーニングし、陽性者に対しては呼気検査を追加することにしたのだ。

採血は侵襲的だ。緊張や痛み刺激により迷走神経反射が生じることがある。血圧が低下し、「脳貧血」を生じる。通常は数分から10分程度で後遺症なく回復するが、ときに転倒して怪我をする。迷走神経反射の好発年齢は15歳前後だ。このようなことが起これば、受診者は一気に減ってしまうだろう。横須賀市の方法では、このような心配はない。

では、ピロリ菌の感染が確認されれば、どう対処するのだろう。対応は、通常の診療と変わらない。抗生剤が処方される。少し専門的になるが、その安全性について解説しよう。中学生に対して抗生剤を投与することに批判的な医師もいるからだ。

今回用いられる抗生剤は、アモキシシリン1500ミリグラム、クラリスロマイシン400ミリグラムを7日間だ。この2剤は日常診療で汎用され、安全性は高い。

通常用いられるクラリスロマイシンの用量は1日400ミリグラム、小児の場合は体重1キロあたり10~15ミリグラムだ。中学生2年生の平均体重は約48キログラム。横須賀市は抗生剤の過剰投与のリスクを考慮し、対象を体重35キロ以上に限定している。厚労省の推奨する投与量の範囲内におさまる。
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文=上昌広

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