スペインのイタリア産「ゆめにしき」
スペインのバレンシアで出会った寿司シャリも「ニシキ」だった。
バレンシアの「メルカド・デ・コロン(コロン市場)」内にある「MOMIJI cocina japonesa」。ショッピングモールのイートインのような気軽なカウンターの店だが、海外の寿司店にしてはクオリティーが高い。
MOMIJIでは日本製のガス釜で炊飯している
注文したのは、現地のアルブフェラ湖で取れたウナギの一本寿司。シャリは、しゃっきり感や弾力に乏しいものの、粒立ちが良く、寿司酢がしっかりと効いていて、日本で食べているものと遜色ない。
イタリア産「ゆめにしき」のSUSHI
オーナー兼シェフのディエゴ・ラソ氏は、日本の料理店で修行経験もあり、和包丁も扱いこなす。使っている米は、イタリア産の短粒種で商品名は「ゆめにしき」。品種は「こしひかり」。ラソ氏によると、「(寿司に合うと言われている)ササニシキの存在は知っているものの、スペインでは手に入らない」そうだ。
SUSHIを通して米の魅力を知る
トルコやスペインにも米があり米料理もあるが、ツヤや甘さや粘りが少なかったり、炊飯調理では粉っぽい舌触りになったりと、寿司やSUSHIには向くとは言い難い。こうした米を使って、トルコではピラフを作り、スペインではパエリアやメロッソ(雑炊)などを作る。その土地にその米があるからこそ、その米料理がある。炊飯した米を白ごはんで食べられるのは、日本の米ならではと言える。
とは言え、「日本米でなければおいしい寿司やSUSHIを作ることはできない」という見方は、先入観に過ぎない。ラソ氏がおみやげにくれた「ゆめにしき」を日本に帰国してから土鍋で炊いてみたところ、なぜか酢飯のような風味を感じた。しゃっきりとして、粘りが少なく、ほろほろ。えぐみがなく、甘みはあり、冷めるとぼろっとする。白米で食べるには厳しいが、たしかに寿司には向きそうだ。
日本で炊飯した「ゆめにしき」
海外のSUSHIのシャリに注目するだけでも、世界の米の多様さが分かり、その中で日本の米はほんの一握りに過ぎないことに気づく。海外では「ヘルシー」「グルテンフリー」など、米食は注目されている。こうした流れもあり、さまざまな国でさまざまなSUSHIが増えることによって、世界的な米の価値向上につながっていくかもしれない。
日本では米の消費量は減少する一方だが、海外のSUSHIシャリに目を向けてみると、普段何気なく食べている日本の米の魅力にも改めて気づくことができ、見過ごしていた日本の米のポテンシャルを引き出せるのではないかと期待している。
連載:台湾と日本のお米事情
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