知識と経験を備えた高年齢世代が野心的なミレニアル世代と組めば、イノベーションをさらに加速させ、持続可能なビジネスを生み出せる。コンリー氏はいまや、サンフランシスコのテクノロジー企業でのイベント登壇を積極的に行い、全米各都市にも遠征して講演しています。
「5世代の人間が共存するこれからの職場では、世代間の隔たりを取り払い、あらゆる世代が共に働く形を意識すれば、これまで以上に生産的でクリエイティブなビジネスを生み出せる」とコンリー氏は語ります。実際に、高年齢社員と若者社員がペアとなるメンタープログラムを展開した企業では、ノウハウの共有が活発化され、生産性が高まるといわれます。
「多世代が協働から生まれるメリットを享受するには、職場で異なる世代が互いに助言し合い、年配者と若者の間で知恵が双方向に流れるようにする必要がある。現代的な高年齢労働者は、モダン・エルダー(Modern Elder)として、自身のミドルキャリアを見直し、新鮮な気持ちでキャリアを築くべきだ」というのが、コンリー氏の提案です。
モダン・エルダーとは、知恵と経験に加え、好奇心や初心に返る気持ちを併せ持ち、若年者からも学ぼうする年長者のこと。「インターンシップのような姿勢」と「メンターとしての組織への貢献」、この相反する役割を楽しんで実行できる現代的な高年齢労働者を養成するため、彼はワークショップも運営しています。
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日本の社会での年齢差別は
テクノロジーやイノベーションの街、サンフランシスコで起きている年齢差別の事情から、日本は何が学べるでしょうか。
日本では定年退職が慣例として残る点など、アメリカでの働き方のシステムとは異なりますが、高年齢労働者への年齢差別が職場で実在しているのも事実です。
ある研究者によれば、意外なことに、個人主義である欧米諸国よりも、儒教を重んじ高齢者を敬う文化を持つ東アジア諸国のほうが、年齢差別の度合いが強いという結果も出ています。その要因は、高齢社会の急速化にあると研究者は指摘します。
少子高齢化で労働人口不足のなか、日本はこれまで以上に急速に高齢化へと向かいます。一方、活気を見せる日本のテクノロジー企業は、若い社員を雇うほど企業イメージの斬新さにつながるという考えを持っていて、この点ではサンフランシスコの状況に酷似しているように見えます。
その改善には、モダン・エルダー養成など個人側の改革と、組織側での年齢差別のカルチャー改革を、日本の文化に沿った様式で取り組めるかどうかが鍵となるかもしれません。まずは、日本でも存在する年齢差別について認識して、理解すること。世代間の隔たりを知り、高年齢者に対して思い込みがないか、または若年齢層の社員についても偏見がないのか、個人が認識することも重要ではないでしょうか。