経沢香保子さんが語る「社会と楽しく繋がっていく場所としての仕事」

撮影:原哲也


「日本に来ていただいている」という感覚
 
吉田:ベビーシッターのサービスは、大きく「住み込み」型と「通い」型の2つに分かれるかと思いますが、どちらがより良いサービスを提供できるとお考えですか。

経沢:私の考えとして、ベビーシッターは究極的には、家に住み込みで働いてもらうのがとても助かるとは思います。ただ日本の場合、文化的にまだ馴染みがなく、家の中に住んでもらう場所もないので、今はスマホでマッチングする形で取り組んでいます。

将来的には海外でベビーシッターの養成学校を作り、日本に来てもらうことも考えています。吉田さんの海外での取り組みはそれに近いのですか。

吉田:はい、まさにそうですね。今ミャンマーとカンボジアで職業訓練学校を作る準備を進めています。職種としては、介護、IT、建設といったものを考えています。日本語、日本の文化、専門技術、この3つを教えていくことになります。


 
経沢:海外で学校を作るというのは、私も頭の中で考えていたことなのですが、現実世界で実際に取り組んでらっしゃるのですね。
 
吉田:外国人材は非常にポテンシャルが高いんです。「英語に触れられる」という理由で、フィリピン人のベビーシッターを希望される日本人の親がいる、といった話も聞きます。
 
経沢:吉田さんが関わっている外国人の方が、日本に来られる大きな理由は何ですか。
 
吉田:収入が大きなモチベーションなのは間違いありません。ただ外国人の方からすると、日本だけに拘る理由はそれほどなく、他にも選択肢は数多くあるのです。

だからこそ私は外国人の方に対しては「日本に来ていただいている」という感覚ですね。日本企業の中には、まだ「東南アジアの人は日本に来たがっている」と考えている人もいるのですが、ギャップを感じてしまいます。
 
経沢:行き先として人気の国はどこですか。
 
吉田:例えばカンボジア人から見ると、タイなどは人気ですね。地理的、言語的、文化的に近い、といった理由が挙げられます。
 
「女性ロールモデル不在時代」を経て
 
吉田:今日の日本の大企業に対する私の印象は、「働く女性に対して男女差別はないけれど、区別もない」というものです。経沢さんは大学卒業後の就職先としてリクルート(現・リクルートホールディングス)を選ばれていて、「女性に対して差別はないけれど、区別はある会社」とお話しされていますね。

経沢:リクルートは女性に対して「重い荷物は持ってあげる」という優しさはありながらも、フェアに結果で評価をしていました。


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文=吉田健太朗 写真=原哲也

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