経沢香保子さんが語る「社会と楽しく繋がっていく場所としての仕事」

撮影:原哲也


吉田:経沢さんはキッズラインで2015年からベビーシッターのマッチングサービスを開始されていますが、日本ではベビーシッターの利用環境はどのように変化しているのでしょうか。
 
経沢:みなさんにベビーシッターのサービスを使ってもらい、どんどん形になっていっているという実感はあります。キッズラインの利用率は、特に首都圏で高くなっています。決まった時間に利用する定期予約、朝夕の送迎利用、病時やスポット利用など、様々な形で利用してもらっています。

ただ4年前は苦戦していました。ベビーシッターを利用することに対する罪悪感を持つ人も多かったので、そういう人たちはSNSなどで「ベビーシッターを利用している」と言いにくかったのだと思います。今では「今日キッズラインの人が来て子供が喜んでいた」とサービス利用者の方が自らSNSに投稿したりするようになってきています。
 
吉田:「ベビーシッターが来ている」とSNS上に書けない時代があったのですね。
 
経沢:なので色々と工夫をしました。ベビーシッターを利用していると「育児を放棄している」と周りから批判されるのではないかと心配する人もいたので、家庭教師も務めることができる女子大生ベビーシッターに来てもらうことで利用者に「家庭教師が来ている」と言える状況を作るなどして、罪悪感なく利用できるようにしました。


 
吉田:経沢さんが常々おっしゃっていますが、学生にとってもワーキングマザーのライフスタイルを間近で見られる良い機会ということですね。
 
経沢:そうなんです。たとえばある学生は、自分の親が専業主婦だから、ワーキングマザーがどのような働き方や生活をしているのか、イメージできなかったそうです。しかしベビーシッター先の家庭でワーキングマザーの方に就活相談をするほど信頼を寄せるようになった、なんていうこともありました。
 
吉田:そういう交流は非常に重要ですね。
 
経沢:ベビーシッター利用に関して、日本と欧米とでは大きな違いがあります。日本は文化的に、他人を自分の家の中に入れることに強い抵抗感があります。ですので、理解を深めてもらうため最初は赤字覚悟で「初回無料サービス」を積極的に打ち出しました。
 
吉田:一回利用してもらえれば、その便利さに気付いてもらえる、ということですね。
 
経沢:はい。食べたことがない料理のおいしさを知ってもらうような感覚です。
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文=吉田健太朗 写真=原哲也

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