ホ氏は、とある急性脳梗塞患者が治療中に失語症状をみせたことをきっかけに、脳卒中の研究に注力。患者は施術後に順調に回復をみせたそうだが、自分の治療の選択が正しかったどうかを知るすべがないことに悩み、回復の具合をあらかじめ予測できる方法を探し始めた。独学でプログラムを勉強していたという経緯もあり、昨年5月から本格的な研究に踏み切ったという。
なおホ氏は、今回の研究結果を発表する以前、2012年から独自に開発した脳卒中救急診断アプリケーション「脳卒中119」を運用している。脳卒中の簡易な診断法や、専門病院の場所案内など情報コンテンツを提供しており、すでに1万人以上にダウンロードされている。
今回の研究に関して7カ月間の研究で得られた結果は、非常に有意義だった。ホ氏は3カ月間で2602人の患者のデータを入念に検査・入力。データの信頼性を高め、研究結果を医療現場ですぐに活用できるよう論文としてまとめた。ホ氏が開発した予測モデルは、それまで70%未満だった予測結果を90%以上に引き上げることに成功している。
結果、治療を行うかどうか、また治療方法の判断を客観的に行うことができるようになったと、現地メディアは評価している。今後、より多くのデータを蓄積することで、さらに精度が高まることが期待される。
なおホ氏のモデルは、38の根拠となるデータを入力することで、治療3カ月後の患者の状態を予測する。用いられるデータは、年齢、性別、喫煙歴、症状発生後からの来院時間、脳卒中重症度評価スケールのひとつである「NIHSS」、初期血圧、薬物服用歴など。予測結果はレベル0~6で示され、0〜2は良好、3〜6は問題があるという風に判断することができるという。
米国においては、脳卒中患者の診断に人工知能が用いられようとしている。「Viz.ai」が開発したアルゴリズムは米食品医薬品局(FDA)に認可されている。脳卒中など脳の病気は、発生からいかに迅速に適切な処置を行うか、言い換えれば「ゴールデンタイム」を逃さないことが重要とされている。患者数も世界的に多く、精度の高い画像解析アルゴリズムや予測モデルの登場・認可が待たれる。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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