しかし、週明けの4月1日の市場ではリフトの株価は29日の最高値から20%も下落した。同社の企業価値は昨年6月の資金調達時には151億ドルとされていた。リフトの出資元は、わずか9カ月間で60%もの含み益を得たとされた。
ここで注意したいのは、リフトの昨年の売上高が22億ドル程度であり、9億ドルを超える赤字を計上していることだ。さらに重要なのは、同社の赤字額が2017年から3割強も増えている点だ。
リフトは今後の7年間で黒字化を果たし、巨大な企業価値を正当化すると述べている。しかし、同社は設立されてまだ7年の会社だ。同社の前途には様々な困難が待ち構えている。変化し続けるテクノロジーや法規制の中で、リフトがこのまま順調に成長を遂げ、黒字化を果たすと考えるのは、楽観的すぎるかもしれない。
企業価値の観点からいうと配車サービス企業らは現在、分不相応な巨額のバリエーションを得ている。米国のレンタカー大手3社(エンタープライズ、ハーツ、エイビス)の時価総額の合計は現在約100億ドルだ。
これに対し、今後上場するウーバーの時価総額は1200億ドル(約13兆円)とされ、配車サービス2社の企業価値はレンタカー大手3社の合計の14倍にも達している。レンタカー企業らは、配車サービスに殺されたような評価を受けている。
しかし、配車企業らが今後長期的な成功を収め、規模をスケールさせるためには、車両の供給やマネージメントをレンタカー企業に頼る必要も出てくるだろう。
現状の配車サービス企業らが受けている評価は、現実とは乖離したものといわざるを得ない。ウーバーやリフトらは、シリコンバレーの追い風を受けてここ10年ほどの間で急成長を遂げてきた。しかし、現在はその追い風がやみつつある。
筆者が今考えているのは、リフトのIPOがシリコンバレーの輝かしい時代の終止符となってしまう可能性だ。