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2019.03.12 17:15

エイベックスが構想する新たな「エンタメ経済圏」 業界も国境も越えていく

エイベックス グループ執行役員 CEO直轄本部 本部長 加藤信介

エイベックス グループ執行役員 CEO直轄本部 本部長 加藤信介

音楽業界を取り巻く環境の変化に合わせ、エイベックスが既存事業の枠組みに捉われることなく、さまざまな事業領域で面白い取り組みを展開している。

2018年に創業30年を迎えたエイベックスは現在を、「第三創業期」と位置付け、2015年末から構造改革に着手。組織構造や組織風土の変革、新たな人事制度の導入、そしてオフィス環境の見直しなどを行ってきた。その過程において「新規事業を含めたイノベーションを推進するチームを組成するべき」という課題感から、2018年4月、CEO直轄本部が生まれた。

その後、国内では、メタップスとの合弁会社「mee」、ファンとアーティストのコミュニティをアップデートし、フィンテック領域のサービスを提供する子会社「エンタメコイン」、エクシヴィとVTuber(バーチャルYouTuber)とVRを活用した新たなアニメ表現を追求する「AniCast Lab. 」を設立。

また、海外では世界中の最先端のスタートアップとともに音楽の未来をつくっていくためのオープンイノベーションプロジェクト"Future of Music"をローンチ。

さらには、「TWH」と「MAKEY」の子会社化を含む、既存のマネジメントとは異なるデジタルクリエイターおよびインフルエンサー領域への本格参入など、今後大きな成長が期待されるIP創造事業や、テクノロジーを掛け合わせたビジネスへ積極的にアプローチしていくことを短期間のうちに次々と発表している。

なぜ、ここまで積極的にエイベックスは新規事業に取り組むのか。グループ執行役員 CEO直轄本部 本部長の加藤信介に話を伺った。

外部環境が激しく変化している今だからこそ、大きなチャンスがある

──なぜ、エイベックスはここまで積極的に新規事業に取り組むのか。その理由を教えていただけないでしょうか?

ヒットコンテンツとヒットアーティストを生み出し続ける。それに加えて、新規事業も創出していく。この両方をまわしていくことが大事である、という考えは社内に昔からありました。なぜなら、片方だけ上手くいったとしても結果的には、会社の成長につながっていかないからです。2つの歯車をうまく噛み合わせ、成長していくことが大切。

しかし、エイベックスはこれまで、とてつもなく大きなヒットアーティスト、ヒットコンテンツを生み出せたおかげで、それを維持継続していけば、業績が上がっていく。一部のトップダウン案件以外は、その部分に依存してしまう状態が起きていたのも事実です。

もちろん、今後もヒットアーティストを生み、コンテンツをつくることが弊社のコアコンピタンスであることは変わりません。しかし、外部環境に変化に合わせて、アーティストやコンテンツの捉え方やヒットの概念を変え、かつ既存事業の枠組みに捉われず、新しいことにも取り組んでいかなければ、いずれエイベックスはダメになっていくかもしれない。



そんな危機感から、2016年5月に「avex group 成長戦略 2020 ~未来志向型エンタテインメント企業へ~ 」を発表し、2020年に向かう今を「第三創業期」と位置づけ、全社的な改革を行うことになりました。

音楽業界は世界に視野を広げると、大きな可能性が眠っています。グローバルでは2030年頃に市場規模は11兆円規模に成長していくと言われています。いまが6兆円ほどなので、約2倍。日本はいま踊り場に差し掛かっていますが、今後この流れに乗って、日本の市場も成長していくと考えています。

なので、外部環境が激しく変わっていることを「危機」と捉えるのではなく、エイベックスはチャレンジングなタイミングではあるけれども「チャンス」と捉え、ダイナミックに会社を変えていっています。ヒットアーティストやコンテンツ作りも、既存事業も、新規事業も、全てをアップデートしているんです。

──異なる事業領域にいる会社と合弁会社を立ち上げ、エンタメ業界にアプローチしていく動きは面白いな、と思いました。

いま流行りの「オープンイノベーション」という言葉を使うのは少し気恥ずかしい気もしますが、結局、僕たちがやってきたものは今で言うオープンイノベーションなのかな、と思っています。

docomoさんと立ち上げた動画配信サービス「dTV」や、サイバーエージェントさんと立ち上げた音楽ストリーミングサービス「AWA」は、外部環境が変わっていく中で、どれだけお互いの強みを掛け合わせて価値を創出できるのか、ということに対する挑戦だったと思います。
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文=竹中玲央奈 写真=小田駿一

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