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2019.03.04

家族経営の米メキシカン食品企業が「100億円」を調達した理由

Moving Moment / Shutterstock.com

投資家たちは投資先候補を見定めることを「デート」に、契約を結ぶことを「結婚」にたとえる場合がある。マンハッタンに拠点を置くVC「ストライプス・グループ(Stripes Group、以下ストライプス)」にとって「シエテ・ファミリー・フーズ(Siete Family Foods、以下シエテ)への投資は、大家族に嫁/婿入りするようなものだったと言えるかもしれない。

女性向けメディア「Refinery29」、フードデリバリー企業「Grubhub」、アーモンドミルクのメーカー「Califia Farms」などへの投資で知られるストライプスが、9000万ドル(約100億円)を投資したシエテは、グレインフリー(穀物不使用)のトルティーヤを製造販売する企業。テキサス州オースティンを拠点とする家族経営のスタートアップだ。

実はシエテは出資を募っていなかったのだが、ストライプスがシエテの企業理念に共鳴したことで投資が実現した。シエテのCEOである31歳のミゲル・ガルサは「家族経営のビジネスにとって、『1に家族、2に家族、3にビジネス』の指針は絶対だ」と語る。

「トルティーヤチップスを作っているからスナックのメーカーのように見られがちだが、我々の目標はメキシカン食品の一大ブランドを築くことだと投資家に伝えた」

「(健康上の理由などで)トルティーヤやトルティーヤチップスを食べられなくなった人たちに、自分たちの文化や伝統に再びつながれる機会を提供できることは素晴らしい。色んな人に我々のブランドを体験してもらいたい。とても親しみやすく、それでいて革新的な食品をね」とミゲルは続ける。

スペイン語で数字の7を意味するシエテの始まりは、ミゲルの姉のヴェロニカ・ガルサが自己免疫疾患を患い、グレインフリーの食事を余儀なくされた頃にさかのぼる。彼女を励ますため、家族全員が、従来の小麦粉やトウモロコシ粉のトルティーヤを食べるのをやめた。

やがてヴェロニカはアーモンド粉のトルティーヤを作り始め、2014年に一家でシエテを創業。2017年、CEOのミゲルはフォーブスの「30アンダー30」食品部門の一人に選出された。

現在、シエテはアーモンド粉、キャッサバ粉、ひよこ豆粉、カシューナッツ粉などを原料とするトルティーヤの他、アボカドオイルで揚げたトルティーヤチップスや、ホットソース、植物性のケソなどを自社のオンラインショップと全米約4000の食料品店で売っている。

コストコでの販売も視野に

昨年だけで14種類もの商品を開発した社長兼チーフ・イノベーション・オフィサーのヴェロニカは、新商品を世に送り出す際の条件を次のように語る。「伝統からインスパイアされ、かつ革新的なものであるか? ユーザーの課題を解決するものになっているか? 誰にでも開かれているか?」

今回、シエテがストライプスから調達した資金は、現在は3人しかいないセールス部門と、ヴェロニカを含めて2人しかいない研究開発部門の人員補充に充てられる。ミゲルらはコストコなどの大手小売チェーンとの取引も視野に入れている。

シエテの少数株主として同社役員に就任するストライプスのカレン・ケンウォージーは、シエテのような企業に投資する機会は稀だと語る。

「シエテは現在のマーケットではとても特殊な存在で、他のどのコンシューマーブランドとも似ていない。メキシコ系アメリカ人コミュニティの声を社会に届ける力を持っているだけでなく、これまでイノベーションが起きていなかった分野でより健康的な食を推進している」

編集=海田恭子

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