上司と話が通じないのにはワケがある─平成の終わりに世代論を再考する(前編)

ニッセイ基礎研究所 主任研究員 久我尚子




人に売れない、だから買わない、のロジック

上司の世代からすれば、購買の価値、購買に至るまでのロジックがまったく違う。しかし氷河期世代以下の読者にとっては至極あたりまえの話が続いていることだろう。

世代論というのは、誇張された呼称という見方もあるが、如実にその姿を表していると感じる。筆者もそうだが、久我も「こういう話は楽しいですよね」と言う。世代が持つ個性がとても明確になる瞬間だ。

──例えば、具体的な例で興味深い若い世代の行動はありますか。

先日、日本記者クラブで消費動向のお話をさせていただいたのですが、シェアリングエコノミーに代表される若者のモノの買い方は面白いですね。かつて売る時のことを考えて買うというのは家やクルマではあったと思うんですけど、洋服とかはあまりなかったですよね。でも今の若者は『3万円はちょっと高いかなと思って、でもメルカリで2万5000円で取引されていたから実質5000円だから買っちゃおう』という行動をするんです。売ったもののお金で次を買って、ぐるぐる回していますと。

──売れないと買えない。売れないから買わないということですね。自分の趣味に合わなくても買うのでしょうか。

面白いのが、高級ブランド品だけではないんです。ZARAとかユニクロとか手頃なものでも、皆が知っているものが売れるんですね。なぜかというと画像とコメントで判断できる身近なものだからで、サイズ感もわかるしということなんです。まったく無名なものより、多少高くても「どうせ売れるから『初期投資』が高くてもいいか…」となる。

──初期投資…経営者みたいですね。

売る際に箱付きのほうが高く売れるから箱もとっておくんです。箱はかさばりますが、メルカリを多用する人は箱を保存しておくためにわざわざメルカリ用にひと部屋使う人もいますし。シェアリングサービスのメリットをとてもスマートに捉えている。

クルマを買わない若者についても、普段乗らないなら買わなくて借りるのだと。それよりも将来を考えた住まいを優先して、いい場所で豊かな生活を目指し、そして、外車を借りる。

──上司世代の私が、クルマ買わないとか理解できないと反論するとお互いイラっとするのでしょうね。

こういう話を詰めていくと、じゃあオジサンたちはどこに行ったのかとよく言われるんです。ちょいワル的なお金を使う方たちはどこに行ったのだろうと。これはまだ、しっかりとした数字を取れていないのですが、夜な夜な飲みに行くのではなく、皇居のまわりを走っているのではないかと。

──うっ……。私は皇居ではないですが、走っています。最近、といいますかずっと走っています。

40代の男性の飲酒習慣率は下がっています。むしろ女性のほうが年齢によっては上がっています。おいしいお酒を飲みに行くのではなくて、走る。そして何かモノを買うならまずアップルウオッチなんじゃないかと。私のまわりの40、50代も走っています。

取材時間を気にして目をやる筆者の時計はアップルウオッチ。すべてを当てられた感のある私は多少意気消沈しつつ、第2回は、「女性」活躍と消費の現状についてお聞きする。

後編|子どもの習い事に高額タクシーを使う女性たち〜平成の終わりに世代論を再考する(後編)


久我尚子◎ニッセイ基礎研究所 主任研究員 。消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティングを研究分野とし、人々の暮らしをデータから読み解く。最近のレポートに「日本の家庭に眠る”かくれ資産”総額は推計37兆円」「女性のライフコースの理想と現実」など多数。著書「若者は本当にお金がないのかー統計データが語る意外な真実ー」(光文社)

文=坂元耕二 写真=西川節子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事