ナイキのシューズ崩壊から学ぶ、事業経営における教訓2つ

デューク大のザイオン・ウィリアムソン。履いていたスニーカーが破れ、膝を負傷した。(Chuck Liddy/Raleigh News & Observer/TNS via Getty Images)

米バスケットボール界では先週、レブロン・ジェームズ以来の期待の星である若手選手が、試合中に使用していたナイキ製スニーカーの破損により負傷するアクシデントがあった。これを受けナイキ株は翌日に下落し、同社の時価総額は11億ドル(約1220億円)へと下がった。

20日夜の試合では、米大学バスケのスター選手であるデューク大のザイオン・ウィリアムソンが激しく切り込んだ際、履いていたスニーカーが破れ、膝を負傷した。この出来事の余波は大学バスケ界のみならず、ナイキ帝国全体にも広がった。

ウィリアムソンの膝は軽度の捻挫と診断され、深刻なものではなさそうであるのに対し、ナイキブランドへの長期的な影響は不透明だ。だが、長期的にどうなるかにかかわらず、短期的にはこの件から学べる大切なビジネス上の教訓が2つある。

1. リスクはほんの一歩先に

注目の一戦だったデューク対ノースカロライナの試合開始後1分も経たないうちに起きたスニーカー損壊は、異様な出来事ではあったが、リスクというものが予測不可能ながらも重大な性質を持つことを示した。リスクは単に保険や投資会社に関するものだと思われがちだが、それは全くもって不正確だ。あらゆる企業が、置かれている環境によってさまざまなリスクに直面し得る。

私は大昔、経営学修士号(MBA)課程にいたころ、予測可能な低リスク環境にあって利益を着実にあげられる安定した組織の好例として、公益企業について学んだ。だが、気候変動がそれを変えてしまった。米カリフォルニア州の電力大手パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック(PG&E)がいい例だ。同社は、自社設備がカリフォルニア州で起きた壊滅的な山火事の原因となった可能性をめぐり推定500億ドル(約5兆5000億円)の負債を抱え、先月に破産申請した。どんなビジネスであれ、健全で堅固なリスクマネジメントの大切さをみくびってはならない。

2. 品質を過信してはいけない

自分のビジネスが、マイクロチップやジェットエンジンの製造、レタス農家、牧師、あるいはフォーブスへの寄稿など、どんな内容であろうとも、絶えない用心は必要だ。品質に深刻な問題があれば、すぐに露呈する。

私はナイキに対して悪感情があるわけではない。ナイキにはずっと感心させられてきた。しかし、同社が今、品質管理とスニーカー製造過程について大規模で高コストの調査をしていることは間違いないだろう。

ナイキは「私たちは当然、懸念を抱いており、ザイオンの早い回復を願っている」と表明。「製品の品質とパフォーマンスは最重要であり、今回の出来事は単発的なものではあるものの、われわれは問題特定に取り組んでいる」と発表した。ナイキはもちろんその必要があり、そして実際に取り組むだろう。バスケットボールに興じ、スニーカーを履く若者世代の信用を完全に回復させるためには必要なことだ。

今回の出来事が示すのは、ビジネスの成功がいかに難しくはかないものかということ。最高のビジネスには、リスクを意識し、細部に気を配ることが欠かせない。「品質管理」がいかに退屈に思えたとしてもだ。

編集=遠藤宗生

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