物議の膝つき選手に賭けたナイキ 狙いは若者層

コリン・キャパニック選手(Michael Tran / FilmMagic / by Gettyimages)

米スポーツ用品大手のナイキは、米プロフットボールリーグ(NFL)で国歌斉唱中に人種差別への抗議として膝をつく運動を始めたコリン・キャパニックを、「Just Do It」ブランド戦略の広告塔として起用した。

ナイキがなぜそのような決断に至ったのかを理解すべく、私は15歳になる息子のライアンを対象にちょっとした調査を行った。息子とその友人らはナイキの忠実なファンで、ナイキのスニーカーを熱心に購入してはトレードしている。

私が「ナイキがコリン・キャパニックを広告塔にしたことで、ナイキの靴を買いたくなったり、逆に買いたくなくなったりする? それとも変わらない?」と聞くと、息子は「ナイキが何をしたって?」と聞き返した。このニュースを知らなかったのは明らかだ。

「ナイキがコリン・キャパニックと契約して、会社の『Just Do It』マーケティングの主役として起用したんだよ」と説明すると息子は「ああ、それはいいね!」と答えた。つまり、息子とその友人はこのマーケティングにより、一層ナイキを買うようになるということだ。またこの会話から、息子たちはキャパニックの抗議行動を知っていて、フットボールのことは全く気にも留めていないことが分かる。

私が若かった頃にナイキの広告塔だったマイケル・ジョーダンは、政治問題に関して立場を表明することを拒んだ。彼はその理由について、「共和党支持者だってスニーカーを買う」と発言したとも言われている。だがナイキは未来を占い、マーケティングデータを分析して、これとは異なる結論に達した。あるツイッターユーザーは皮肉を込めて、「民主党の社会主義者だってスニーカーを買う」とコメントしている。

だがナイキの決断はそれ以上に、18~29歳に人気のブランドとしての地位を維持したければ、上司からの命令でNFLの試合を途中退場するような気難しい年配の白人副大統領の側には立てないことを反映したものだ。社会の不平等や、武器を持たない黒人男性が警察に撃たれる事件が相次いだことに抗議すべく国歌斉唱の場を活用する選手らを尻目にスタンドプレーを見せたマイク・ペンス副大統領の側には立てないのだ。
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編集=遠藤宗生

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