漫才に時事ネタを取り入れる彼は、社会課題についても積極的に調べている。例えば、韓国との間のレーダー照射事件について現地の声を聞くために、実際に韓国を訪れたのだそうだ。
彼の行動力の源泉は何なのか?
自身もトランスジェンダーで、昨年15万人を動員した日本最大のLGBTプライドパレードを運営するNPO法人・東京レインボープライドの共同代表理事を務める杉山文野との対談連載、第2回。(第1回はこちら)
みんな、自分から声をあげることを恐れている
村本:以前、タレントのローラさんが辺野古埋め立てに反対する発言をして大きく叩かれました。僕もいろんな人に、このことについて意見を聞いて回ったのですが、やはり良い顔をされません。
「ローラさんはタレントだから、番組を降ろすかどうかはあくまでスポンサーが決めることだから仕方ない」「芸能人はイメージで食っているんだから、好感度が下がるかもしれない発言は警戒されて当然」というように。
けれど、サラリーマンである彼らが代わりにそういう発言をするかというと、そんなことはない。理由を尋ねるとみんな「いまはこんな時代だから誰かに叩かれるかもしれない」と。
結局、初めに流れに飛び込む人「ファーストペンギン」になるのをみんな怖がっているんです。それこそ同性愛者の権利のために活動したハーヴェイ・ミルクは、誰も賛同者がいない中で一人、声をあげましたよね。
いまだからみんな当たり前のように「戦争反対」と言っていますが、太平洋戦争の時に同じことが言えるのか。つまり、みんなただ単に「時代の空気」に流されているだけで、本当に自分で考えて発言できていないんじゃないか。
杉山:もちろん村本さんの言うことはもっともです。ですが、メディアを初めとして人は色々なものに影響を受けています。というよりも、ほとんどのことが実はそうやって埋め込まれた考え方で、そもそも自分の実体験に基づいて考えたものではない、ということにすら気づかないことがほとんどだと思うんです。
それこそLGBTについての偏見だって、自分の考え方が誰かを傷つけていることにすら気づかず、「当たり前」の振る舞いをしていると思っていることも多い。それだけメディアの影響力は強い。