「シンガポール航空の座席の後ろに取りつけられた、センサーのようなものが私を見ている。これってカメラなの? 詳しい人は教えて」とのツイートに対し、様々な反応が巻き起こった。
別のユーザーがシンガポール航空の公式アカウントに対し説明を求めたところ、次のような返信があった。
「当社の一部の機体には、外部企業が製造した新型の機内エンターテイメント機器が設置されています。そのハードウェアには初期段階でカメラが埋め込まれていました。しかし、このカメラは無効化されており、今後もこのカメラを用いる計画はありません」
シンガポール航空によると、このカメラは一部のビジネスクラスやプレミアムエコノミー及び、エコノミークラスの座席に設置されているという。同社はこのカメラが機内では「完全に無効化されており、今後も一切、利用する計画がない」と述べた。
その後、同社の広報担当はStraits Timesの取材に対して同様の見解を示し、この機器がパナソニックと、機内エンターテイメント機器メーカーのタレスによって製造されたと明かした。しかし、ここで気になるのは、このカメラが一体どんな意図で設置されていたかだ。
2014年のCNBCの記事でタレスは赤外線カメラを内蔵した、ジェスチャー機能や視線トラッキングが可能な、機内エンターテイメント機器を開発中であると報じられていた。つまり、このカメラは乗客の視線を追尾したり、手のジェスチャーを捉えるためのものだったのだ。
2012年のFlightglobalの記事も、このカメラを用いて、乗客らが手のジェスチャーで映画などのコンテンツを操作することが可能だと述べている。また、視線を追尾することで、映画を観ている乗客が眠った場合、再生を一時停止する機能も実現するとされていた。
タレスの公式サイトには「このシステムにより、航空機の乗客が快適なエンターテイメント機器の操作を行える」と記載されている。同社がユーチューブで公開中の動画を観れば、機能のさらなる詳細が確認可能だ。
つまり、このカメラが当初心配されたような、乗客を監視したり、不審な動きをするものではないことは明確だ。近年は様々な分野で生体認証の利用が進んでおり、航空業界においても、機内でのキャッシュレス決済の普及の促進につながるという期待もある。空の旅がよりコネクテッドになることは、乗客のメリットにつながる。
しかし、今回のカメラが問題視された最大の要因の一つは、その設置場所だ。カメラが座席のモニターではなく、リモコンに内蔵されていたとしたら、ここまでの騒ぎに発展することはなかったはずだ。