ニュージャージー州議会とフィラデルフィア市議会は既に、現金の受け取りを拒否する店舗に、罰金を科す法案を可決した。背景にはキャッシュレス化が、銀行口座を持たない人々の差別につながる懸念がある。
キャッシュレス化は多くの人々の暮らしを便利にするが、銀行口座やクレジットカードを持たない人々は不便を強いられることになる。
この問題は昨年末にロンドンで開催された、フィンテックのカンファレンスLendItでも話し合われた。イギリスの元財務大臣のジョージ・オズボーンは、英国でキャッシュレス化を推進してきたが、低所得層の人々への影響を懸念するグループから反発にあったと述べた。
米国は今後、スウェーデンのようなキャッシュレス先進国になれるのだろうか。Venmoのようなフィンテック系のアプリの利用は広まってはいるが、チップ文化が今も残る米国で、現金を追放することは難しい。
昨年12月のUSA Todayの記事は、米連邦準備制度委員会のレポートを引き合いに、「米国では今でも現金こそが支払いの王様だ」と述べた。調査によると、米国での現金流通量は長期にわたる上昇基調の最中にあり、過去最大のレベルに達しているという。
「現金は決済ツールのなかで最も利用頻度が高く、全ての支払のなかで30%、10ドル以下の支払いでは55%を占めている」と連邦準備制度委員会は指摘している。近年はEコマースの成長が続いているが、支払いの77%はオンラインではなく対人で行われている。
連邦準備制度委員会によると、現金の流通量は17年間にわたり上昇してきたという。また、市場に出回る100ドル紙幣の数は、1ドル紙幣の数より多いという。
アップルペイのようなモバイル決済が普及しても、多くの米国人がユーザーネームやパスワードを覚える手間がかからない、現金を選ぶ傾向は変わらないだろう。