眠りの長さが、感じる痛みの強度に影響 新たな研究結果が示唆

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毎晩質の高い睡眠を十分に取ることができない場合、日中は痛みに敏感になってしまうかもしれない。睡眠に関する研究の中では長年、この点が何度も指摘されてきた。

しかし、こうした関連性が「なぜ、どのように」生じるかを特定するのは難しい場合がほとんどだ。睡眠と痛みへの感度が関連している理由もこれまで特定されていなかったが、その答えは先ごろ神経科学ジャーナル(Journal of Neuroscience)に発表された新調査により少しだけ解明に近づいたかもしれない。

多くの人は日頃の経験から、睡眠と痛みの関係を実感している。睡眠不足のとき、首や肩の筋肉が緊張して痛みを感じたり、頭痛になったりするのは珍しいことではない。また、痛みは睡眠を妨げるので悪循環が生じる。

同調査では、25人ほどのボランティアを集め研究所で実験を行った。参加者は全員、睡眠や痛みに関する既知の障害を持っていない人だ。

研究者らはまずボランティアに1晩睡眠を取らせた後、痛みの限界点を測定した。測定では、脚に熱を加えて不快に感じるレベルまで温度を上げ、ボランティアには痛みのレベルを1から10の間で段階評価させた。また測定の最中は、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を使って脳活動を測定した。その後研究者らは、ボランティアを睡眠不足にした後でこのプロセスを繰り返し、再び痛みへの反応を評価した。

その結果、睡眠不足の状態に置かれた被験者は、温度が低い場合でも痛みの評価が総じて高かった。

カリフォルニア大学バークレー校博士課程の学生で同研究の主執筆者であるアダム・クラウスは「(睡眠を十分に取っていなかったとき)被験者は低い温度でも不快感を持った。そのため十分睡眠を取ることができなかった場合、痛みの感度が上がることが示された」と述べ、「損傷のレベルは同じでも、十分な睡眠がない場合は脳が痛みをどう判断するかが変化する」とした。

また脳活動の記録により、この現象が起きる背景も一部説明できるかもしれない。脳画像からは、痛みへの反応の中枢を担う部位、体性感覚野での活動が著しく増加し、さらに痛みの管理を担うと考えられている側坐核と島皮質が機能していないことが示された。この組み合わせは、脳が痛みに対処する上で神経系統の機能不全に陥っていることを示唆している。
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翻訳・編集=出田静

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