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2019.02.06

宇宙旅行はビジネスとして成り立つのか?

Max Meinzold / shutterstock.com

私は10年前、ロサンゼルスから車で1時間ほど北のカリフォルニア州モハベを中心とした宇宙旅行産業について記事を執筆した。モハベ周辺(特にエドワーズ空軍基地)は、チャック・イエーガーと超音速機X-1の時代から宇宙航空産業の発展を支えてきた。

私の宇宙旅行に関する記事は、2004年のある早朝の出来事についてのものだった。その日、私は息子に学校を休ませ、民間初の有人宇宙船「スペースシップ1」の打ち上げを見物するために2人でモハベへ向かった。

私たちは、小型宇宙船が母船から切り離され、高度9万メートルに達して記録を塗り替える瞬間を、首を伸ばしながら見守った。それはまるで、民間宇宙弾道飛行の新時代の幕開けを目撃しているようだった。

スペースシップ1は、宇宙旅行企業ヴァージン・ギャラクティックが2009年12月に発表した「スペースシップ2」の前身だ。同機は1万4000メートルの高さで、母船の「ホワイト・ナイト」から切り離される。そこからは操縦士2人が、旅行客6人を乗せた同機で宇宙の端を短時間飛行。6分間の無重力状態を経て、地上へと降下し、巨大な滑走路に着陸する。

大衆向けの旅とは決して言えないものの、料金は25万ドル(約2700万円)になると見積もられ、購入できる財力のある人は世界中で数百万人いると考えられた。

しかし、「宇宙旅行」と「民間宇宙飛行」の間には大きな違いがあることが判明した。後者は1982年には既に始まり、ビジネスモデルは機能しているようだ。イーロン・マスクが最高経営責任者(CEO)を務めるスペースXは2018年、19回のロケット発射を実施し、2018年12月には衛星64基の打ち上げに成功した。

スペースXはいくつか存在する民間宇宙企業の一つでしかない。競合企業にはボーイング社とロッキード・マーティン社の共同事業であるユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)や欧州のアリアンスペース、ジェフ・ベゾスのブルー・オリジンなどがある。

ブルー・オリジンは、間もなくチケットが発売予定とされる弾道ロケット「ニュー・シェパード」に加え、数十億ドルのエンジン開発契約も得ている。顧客のほとんどは、会社や政府機関だ。

しかし、採算の取れる事業としての宇宙旅行の現状はそれほどバラ色ではない。現時点で宇宙旅行を経験した人はわずか7人で、飛行数は2001~2009年の間に8回。いずれもスペース・アドベンチャーズ社を通し、ロシアのソユーズ宇宙船を使った旅だった。

宇宙旅行者は2000万~4000万ドル(約22~44億円)の費用を支払い、厳しい訓練を受けたと報じられている。しかし、米国のスペースシャトルが2011年に退役して以降、宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)に向かうためにはロシアの宇宙船を使わなければならなくなり、ソユーズ宇宙船には観光客向けの席がなくなったようだ。
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編集=遠藤宗生

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