気温30度。ジメッとした暑さが残る、11月上旬のシンガポール。11月8日、9日の2日間、同国随一のランドマークとして知られる、リゾートホテル「マリーナベイ・サンズ」には日本や韓国、インドをはじめ、アジア各国から300人以上のジャーナリストやビジネスパートナーが集結。3階のコンベンションセンターは異様な熱気に満ちていた。
彼らが今か今か、と心待ちにしていたのは、世界190カ国で1億3000万人の有料メンバーを魅了し続けている、SVOD(月額制の定額オンラインストリーミング配信サービス)の雄「ネットフリックス」の新作オリジナルコンテンツの発表だ。
時計の針が9時50分をまわると、会場が暗転。大音量で迫力あるオープニングムービーが流れた後、ステージに姿を現したのはネットフリックス創業者兼CEOのリード・ヘイスティングスだ。イベント当日の朝に地元のカフェで飲んだコーヒーの写真を披露しながら、リードが「シンガポールに来たのは初めてだよ」と笑顔で語りだすと、会場は一際大きな歓声が沸き起こった。
ネットフリックスの新作オリジナルコンテンツの発表イベント「See What’s Next」が始まったのは2016年のこと。これまで北米をはじめ世界各地で行われてきたが、アジア地域での開催は初となる。
今回、2日間にわたってシンガポールで開催されたイベント「See What’s Next:Asia」では合計17本のアジア発の新作オリジナルコンテンツが発表されたほか、リードやCCO(コンテンツ最高責任者)のテッド・サランドスなど経営幹部、そしてオリジナル作品に携わる出演者やクリエイターが登壇。今後の戦略や作品への想いなどを語った。
「See What’s Next:Asia」で登壇したリード・ヘイスティングス
アジアは世界でも随一の創作力が集まっている
なぜ、今回はアジア地域でイベントを開催することにしたのか─その背景にはアジア市場に対するネットフリックスの強い期待がある。アジア地域でのコンテンツ展開について、リードはこう語る。
「年々、オンラインストリーミング配信サービスの人気も高まっていますし、アジアは大きなポテンシャルを秘めた市場だと思っています」(リード)
ネットフリックスがアジア地域でサービスを開始したのは、15年9月の日本が始まり。以降、16年から韓国、シンガポール、香港をはじめとした各国・地域でサービスを開始し、本格的にアジア展開を行っている。約3年の月日が経ち、ネットフリックスがアジア地域での攻勢を強めていく。今後、アジアのクリエイターへの投資を拡大。19年には、アジア8カ国から新作・既存タイトルを含めて、合計100本のオリジナルコンテンツの配信を行っていくという。
ネットフリックスのコンテンツ戦略を担っているテッドはアジア地域に注力する狙いについて、コンテンツ制作の観点から、「アジアは世界の中でも随一の創作力が集まっている」と自身の考えを述べる。