ジェン・ルビオ(31)は4年前のある日、チューリヒ空港内を急ぎ足で移動中だった。すると突然、携えていたスーツケースが壊れてしまった。仕方なく中身を詰め直し、粘着テープでスーツケースをつなぎとめた。
買い換えるならどんなスーツケースがおすすめか、彼女はフェイスブック上の友達2600人に聞いてみたものの、納得のいく答えは得られなかったという。
ルビオはかつて、アイウェアブランド「Warby Parker(ワービー・パーカー)」で働いていた。同社は、中間業者を排除することでアイウェア市場を一変させたが、彼女は創業間もない頃の社員だった。そこでルビオは、スーツケースでも同じことができるのではないかと考えた。メガネ店を介さずにメガネが売れるなら、バッグ店を介さずにスーツケースを消費者へ直接届けられるはず、というわけだ。
こうして生まれたのが、「Away(アウェイ)」である。ルビオが、同じくワービー・パーカーで働いていたステフ・コーリー(31)と同社を立ち上げたのは2015年のこと。現在は中国でスーツケースを製造し、インターネットおよび7カ所の直営店で販売している。17年には黒字化を達成し、18年の売上高は1億5000万ドル(約170億円)に達するという。
最初に発売した商品は、飛行機内に持ち込み可能な大きさのポリカーボネート製のスーツケースで、10色から選ぶことができる。米国内なら送料込みで225ドル。ビジネスパーソンに人気の「TUMI」であれば、似たような商品が525ドルもする。
女優やプロバスケ選手の限定版商品も
アウェイが低価格を実現できている1つの理由は、売り上げを百貨店などと折半する必要がないからだ。売り上げの大半はオンライン経由から。また実店舗では主にマーケティングを目的としている。店舗は平日夜7時まで、週末はもっと遅くまで営業しており、手相占いやタロット占いなどさまざまなイベントを開催することで、顧客を呼び込んでいる。
また、ナイキのようなマーケティング戦略をとり、著名人と手を組んでいる。限定版商品を発売するにあたり、モデル兼起業家のカーリー・クロスや女優のラシダ・ジョーンズとキャンペーンを展開したりしている。18年9月には、NBA(全米プロバスケットボール協会)のマイアミ・ヒートに所属するドウェイン・ウェイド選手を起用してワインケースを発売したところ、数週間以内に完売したという。