サムスンが先日発表した、昨年10〜12月期の業績は、営業利益が前年同期比約29%減の10.8兆ウォン(約1兆500億円)となった。同社はこの原因を、スマホ需要の低下や競合との競争の激化にあるとしている。
サムスンの利益の主要な源となっているのが、半導体だ。しかし、半導体部門でも同社は需要減に直面している。さらに、OLEDディスプレイにおいてもサムスンは中国メーカーの追い上げに苦戦している。
IDCの市場アナリストのBryan Maは「今年はサムスンにとって試練の年になりそうだ」と述べている。
サムスンが昨年10月に発表した、2018年第3四半期の純利益は13.15兆ウォンで、前年同期の11.19兆ウォンから上昇していた。また、第3四半期の売上は65.46兆ウォンに達していた。しかし、同社のビジネスの大半は黒字ではあるものの、スマホ部門の売上や利益は低下したとサムスンは述べていた。
「スマホ部門全体については、中価格帯から低価格帯の出荷台数の売上低下により、出荷台数は低下した。プロモーション費用の増加やウォン安の影響で利益も低下した」とサムスンはその時点で述べていた。
IDCのデータによると、サムスンは世界のスマホ市場で20.3%のシェアを獲得し、トップとなっている。2位は中国のファーウェイで、シェアは14.6%となっていた。
一方で台北本拠のトレンドフォースは今年1月の声明で、世界のスマホ製造台数は今年、14億1000万台と、2018年から3.3%の減少になると述べている。背景には、新たなイノベーションの欠如により、買い替え需要が喚起できないことがあげられると、トレンドフォースは述べていた。
音声アシスタントでも苦戦が鮮明
これは今後のサムスンの多様な事業領域に影響を及ぼすことになると、アナリストらは述べている。トレンドフォースは、スマホ向けディスプレイの需要の減少がサムスンのディスプレイ事業にも逆風をもたらすと指摘している。
サムスンのディスプレイ部門であるサムスン・ディスプレイは利益を縮小し、中国のディスプレイメーカーの台頭が始まっているとトレンドフォースは分析した。サムスン・ディスプレイはかつて小型OLED部門で、独占的ポジションを築いていた。しかし、2019年はLGディスプレイや中国の競合(VisionoxやTianma)がサムスンからシェアを奪う見通しだ。
サムスンは既に、8.5世代のOLED工場の製造キャパシティを引き下げているとも伝えられている。また、サムスンは音声認識デバイス市場においても、アマゾンのアレクサやアップルのSiri、グーグルアシスタントらに対する敗色が濃厚だと、ガートナーは指摘する。
サムスンの音声アシスタントのBixbyは、用途がハードウェアの操作のみに限定されているとガートナーは述べている。
この状況のなかで、サムスンは折りたたみ式スマホやディスプレイ、さらに5G関連のネットワーク機器に活路を見出そうとしている。しかし、これらの新興分野はまだ揺籃期にあり、利益を生み出すまでには数年を要する。
ガートナーのWerner Goertzは次のように述べる。「サムスンは過去5年にわたり、5G関連機器の開発を進めてきた。この分野ではようやく、基準が定まりつつある。サムスンは2019年にようやく初期の投資の回収段階に足を踏み入れる段階だ」
サムスンの初の折りたたみ式スマホの「Galaxy X」も、来月にはリリースが期待されている。ただし、同社が折りたたみ式端末で利益を上げられるかどうかは、まだ見えてこないのが現状だ。