今回は日常の中での出来事をきっかけにして、国際経済学における貿易論の要素を家庭で教えてみた体験談を書いていく。きっかけさえあれば、簡易な表を用いるだけで、飽きさせずに理解させることが出来るという一例である。
日常生活に表れた経済学の教材
我が家には子どもが3人おり、上の2人(5歳半と3歳)は女の子である。この年齢の女の子と聞くと、同年代の娘を持つ方にはお分かりいただけるかもしれないが、我が子たちも例外なく「プリキュア」の熱狂的なファン。そのオープニングテーマを歌いながら踊るのが毎日の日課となっている。
ある日、長女が話しかけてきた。「私は歌うのは得意だけど、踊るのが苦手。妹は逆で、踊るのは得意だけど、歌うのは苦手なんだ」
ピアノを始めてすぐに左右の手をバラバラに動かすのに苦労するのと一緒で、歌と踊りを同時にするのは子どもたちには難易度が高いようだ。そこで、ある日から2人で歌いながら踊るのはやめて、長女が歌い、それにあわせて次女が踊るようにしたそうだ。すると、子どもたちのパフォーマンスのクオリティは格段に上がった。
小さな子どもがいる家庭ではよくありそうな光景だが、筆者は日頃から、そうした出来事を金融教育につなげていくことが重要だと思っており、この「得意なことに専念する」という気づきは、国際経済学における貿易論を教えるには最適な教材だ、と感じた。
各自が得意分野に集中するメリット
イギリスの経済学者であるデヴィッド・リカードが提唱した理論に『比較優位の原理』というものがある。急に難しい言葉が出てきて困惑するかもしれないが、比較優位とは、それぞれの国が相対的に生産性の高い分野(生産物)を指している。
貿易という概念がない時代においては、各国が自国のリソース(人口)を使って全分野で自給自足をしていた訳だが、貿易という概念が生まれると、各国が相対的に生産性の高い分野にリソースを集中させ、リソースを外した分野については他国から貿易で仕入れることが出来るようになり、結果的に全体で見ると各国が自給自足をするよりも生産性や効率性が向上するという理論である。