ライフスタイル

2019.01.21 08:00

観光客がほとんどいない都市に、世界有数のカフェ文化が定着した理由


バンドンで気になったのが、外国人観光客をほとんど目にしなかった点だ。2018年4月、シンガポールからLCCで訪問したのだが、日本の離島並みに小さな空港に着くやいなや、イミグレーションで訪問理由を執拗に尋ねられた(自慢ではないが私はイミグレでめったに止められない)。

なんとか切り抜け空港の外に出ると、その瞬間、怪しげな白タク業者が周囲を囲む。今回は知人に迎えに来てもらったため問題なかったが、空港周辺は中心部までの交通案内に乏しい。どう考えても、「外国人フレンドリー」ではないのだ。


こぢんまりとしたバンドンの空港。ジャカルタからは陸路が一般的だ

この話を案内してくれた知人にすると、「バンドンはジャカルタの人たちが遊びに来る場所だからね」と教えてくれた。

インドネシアの首都・ジャカルタからの道は整備されている。バンのシートは広くて座り心地が良く、コンセント付きだ。ジャカルタの中流層以上は、週末にバンや自家用車でバンドンを訪れ、1泊3000円台のホテルに滞在するのだという。私も今回同クラスのホテルに滞在したが、その価格が信じられないほど快適だった。


バンドンで筆者が宿泊したホテル。1泊3000円台とリーズナブルながら、広々として清潔感がある。1階にはアジアンテイストのカフェが入り、コーヒーを楽しむことができた

マーケティングの世界では、ターゲットの具体的な人物像を「ペルソナ」と表現するが、ここバンドンでは外国人観光客がペルソナとして設定されていない可能性が高い。そう考えると、空港からのアクセスが良いとは言えないことも納得だし、英語が全く通じないことも、うなずける(「GO」が通じなかった時は絶望感を覚えた)。

しかしながら、ここまで足を運んだ外国人観光客は、「スレていない」地元の人々の優しさに触れることができ、かつ極めて安価にコーヒーや食事を楽しめる。そうした意味では、あえてペルソナの枠から外れた土地を訪れることも、悪くはない。


「Kopi Aroma」の店内には年季の入ったコーヒー関連器具が飾られていた

歴史と立地を背景にした、こうしたバンドンの戦略は実に自然だ。脈絡のない開発に投資するのではなく、コンテクストのある最低限のハード・ソフトへの投資。高度経済成長期を大きく過ぎた日本も、参考になると感じる。

文・写真=田中森士

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事