通常、フランスのグラン・ヴァンは単一畑や区画のブドウから造られるワインが一般的だが、ニューワールドであるオーストラリアにおいてチャレンジングなワインメイキングで知られているペンフォールズの「グランジ」は“マルチヴァラエタル・マルチリージョナル”。つまり、さまざまな地域や畑から最上のブドウを集めてブレンドし、最上のワインと成すというワイン哲学から造られているのだという。
たとえば、2014年ヴィンテージは、オーストラリアの銘醸地であるバロッサ・ヴァレー、マクラーレン・ベール、ラットンバリー、クナワラ、クレア・バレー、マギル・エステート産のシラーズ(98%)にカベルネ・ソーヴィニヨンを少量(2%)ブレンド。アメリカンオークの新樽100%を20か月の長きにわたって熟成させるワインは南オーストラリアの伝統的なアイコンとしても認定されている象徴的な1本だ。
この「グランジ」はワインコレクターからも大いに支持され、ボトル1本10万円の値をつけるなど、ラグジュアリーのシンボルとして高い評価を受けているワイン。今後の熟成による味わいの変化と、投資対象としての価格の変化、どちらも楽しみな1本である。
プロの視点
食レコ代表でワインエキスパート、レコール・デュ・ヴァン講師も務める瀬川あずさはこのワインをどう見るのか?
「ニューワールドは分かりやすくて初心者向け」というイメージを持たれがちでしたが、造り手の個性が前面に打ち出される現在は、「伝統国だから、新世界だから」と型にはめて考えるのは時代遅れ。人もワインもますますボーダーレスになってきています。
複数畑のブレンドを実践するペンフォールズは、この確固たるオリジナリティーで成功した造り手。少し寝かせてあと10年後……より熟成した味わいをインターナショナルなイベントやパーティーで楽しみたい1本です。