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昨今の自動車のデザインにおいてコモディティ化がささやかれるなか、ライフスタイルジャーナリストの小川フミオは異なる方向性を指摘する。


自動車のデザインはおもしろい。なぜかというと、ゴールがないからだ。4つの車輪に箱型の車体という基本は19世紀から不変だけれど、それにしてもよくまあここまで、というほど毎年新しいカタチが登場する。 

これまで自動車のデザインにとって大事な要素だったのは、技術の進歩、消費者の欲望喚起、燃費、安全性である。こののち自動運転により衝突しない技術が確立すれば、自動車のかたちは革命的に変わるだろう。 

欲望喚起とは1940年代の米国で始まり、50年代と60年代は飛行機やロケットがデザインのモチーフになった。女性のからだの輪郭を模す性的な要素を採り入れて成功したスポーツカーも多い。
 
70年代の石油ショックは、クルマを小さく地味にするいっぽうで、空力など科学をクルマのデザインに持ちこんだ。 

いまでも続くのは、80年代にはじまる衝突安全性の強化である。衝突時における乗員および歩行者の保護のための安全基準は年を追うごとに強まり、自動車デザインに大きな影響を与えている。

そんななか、私が注目するデザインのもうひとつの傾向がある。それを端的に象徴するのが2台。ロールス・ロイスのカリナンと、ランボルギーニのウルスだ。どちらも、性能、ぜいたくさ、価格すべてに「超」がつくスーパーSUVである。
 
これらのクルマを評価するとしたら、“美しい”ではなく“クール”という言葉が適している。50年代のフェラーリや、あるいはシトロエンのように、誰が見てもいいねと思うカタチでない。しかし印象に強く残る。

カリナンのデザイナーと話したとき、これは従来の美の基準から逸脱しているねと私が言うと、「目ざしたのはディスティンクティブであることです」と答えが返ってきた。他車との差別化、一目でロールス・ロイスと分かること、それを最大限意識したというのだ。

ランボルギーニも同様で、強烈な印象を持つスタイリングである。「映画などに出して若い世代に“いいね”と思ってもらえることが重要です」とCEOが背景を語ってくれた。このとき「クール」という言葉を使った。

自動車デザインはかつては機能を表現すべきといわれた。また、フェラーリの美は速さの表現でもあった。それに対して、ビューティフルやエレガントという外見への評価に代わる価値観の台頭である。私はすぐにiPhoneを連想する。その形状に魅力はほとんどない。でも機能がすぐれている。それをクールと言うのと似ているかもしれない。

クールとは現代のデザインへの最高のエールなのだ。


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#18|機能が美しさを体現する。自動車のデザインにゴールはない。

文=小川フミオ

VOL.17

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