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金融から紐解く、世界の「今」

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銀行の起源はルネサンス期イタリアのメディチ家に遡るが、それより前の十字軍の時代に、既にテンプル騎士団が銀行類似の機能を果たしていたことが、ウンベルト・エーコ著の「フーコーの振り子」に描かれている。

当時はテンプル騎士団だけが、国境を超えて信用を持ち、情報やデータを保管し処理できる、ほぼ唯一の主体であった。だからこそ十字軍の参加者は、ヨーロッパを経つ前に騎士団に寄進をし、東方に着いてから現地での購買力に替えていた訳である。

このように、歴史的に見れば、テンプル騎士団やメディチ家など、当時において信用力や情報・データ処理能力の点で最も優位にあった主体が金融機能の提供に乗り出している(金融規制は、このような主体が情報の集積などを通じて強大になり過ぎないよう後から作られた、近代以降の産物といえる)。

したがって現在、中国のBATや米国のGAFAといったBigTech企業の金融サービスへの関与が国際的に注目を集めているのは、決して不思議なことではない。

ルネサンス期以降、銀行業は、情報を効果的に自らに集積するモデルを作り上げてきた。すなわち、支払決済機能の提供を通じて、銀行はさまざまな経済主体の資金の出入りや資産・負債に関する情報を把握でき、このような情報は貸出や投資にも有益となる。

一方、貸出や投資を受ける側も、なるべく低い金利でのクレジットを得るため、銀行への情報の提供に努める。この中で、マネーや複式簿記などのインフラは、情報を共通のフォーマットに翻訳し効率的に収集する上で、重要な役割を果たしてきた。

20世紀の経済を支えた大企業を見ると、航空機(ボーイングなど)やコンピュータ(IBMなど)はもちろんだが、鉄鋼や石油、自動車産業などの主要企業(フォード、GM、USスチールなど)も、実は20世紀に入ってから誕生している。これらに比べ、銀行業はかなり歴史の古い産業といえる。このことは、銀行業のビジネスモデルが、情報を集積する効率性の面で、比較的長い間その優位性を維持してきたことを示している。



現在、フィンテック系スタートアップ企業の金融参入については、銀行側の警戒感は一頃より薄れてきている。設立直後で規模も小さいスタートアップが、金融の根幹である信用を直ちに備えることは難しい。したがってスタートアップ側も、既存の銀行と争うより、むしろ協力することで、その信用を活用しようと考える可能性が高いからである。

文=山岡浩巳

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