何が重要なのかを見失うことで仕事に生じる影響
・チームの仕事の質が落ちる
ハーバード大の経営大学院の学生を対象に行われた実験では、被験者に通常の仕事に加えて2つ目の基本的なタスクを与えたところ(つまり、注意力を奪うものを与えたところ)、そのパフォーマンスは8歳児と同じレベルまで低下した。
・チームの時間が無駄になる
バンダービルト大が実施した研究では、マルチタスクによって効率性が平均40%下がるという結果が出ている。就業日1日当たり最大3時間に相当するロスだ。これは悪循環を生み、効率が落ちてストレスが増加すればするほど、マルチタスクを強いるプレッシャーが増大する。
・チームが努力をしなくなる
タスクを一つ増やすたび、各タスクにかけるべきエネルギーは減ってしまう。
・チームの独創力が低下する
独創力は、長期記憶や、アイデアとアイデアを新しい方法でつなぐ俯瞰的な注意力に頼るところが大きい。頻繁に注意がそらされることで“ディスクへ保存”される事柄も少なくなり、狭い視点でものをみることに時間を割くようになる。こうして、クリエーティブなつながりを見出すチャンスが減ってしまうのだ。
・チームが重要性を識別できなくなる
タスクが増えるほど、本当に重要なものを見極めるための処理能力が低下する。これはチームが意義や目的も不明確なままに勤務時間の多くを過ごしてしまっているということだ。
何が重要なのかをほぼ常に見失っている状態だと、チームは幸福感ややる気のない燃え尽きた人々の集まりとなる。こうした人々は、現実逃避の欲求が強く、電子端末によりどころを求めるようになる。
悪循環をどう断ち切るか?
注意散漫が、自分にとって何が重要なのかを見失っている状態であるなら、解決法は“さらに集中する”ことではない。何かに完全に集中していると同時に完全に注意がそれた状態となることは可能だ。
解決法は、チームにとって何が重要なのかを明確に定義することだ。リーダーとしての役割は、チームが適切なタイミングで最優先事項に注力できるように、ツールや教育訓練を提供し、動機づけを行うこと。それには多くの努力や、コミュニケーション能力、リーダーシップ、そして、深い集中力が必要とされる。
しかし、その見返りは大きい。競合相手は、仕事のスピードアップや生産性の向上、一度により多くのタスクを成し遂げなければという不安に駆られている。これはあなたにとって、この考え方に踊らされるのをやめ、自分と自分のチームにとって何が重要なのかを定義することに集中するチャンスなのだ。