「凶器」にもなりうる外壁タイル 施工不良に売主の責任はないのか

Shutterstock.com

マンションの外壁にはタイル張りが多く、見栄えがする一方、高いところからそのタイルが落下すれば、それは「凶器」になりえる。いま日本のあちこちで、マンションのタイルが落ち始めており、事例には枚挙にいとまがない。

2016年8月、東京都三鷹市のビルの外壁から、台風の強風でタイルが剥がれ落ち、ビル付近にいた歩行者を直撃しケガを負った。この建物は、事故の約4時間前に、縦2m・横3mの外壁が剥がれ落ち、撤去作業を行ったばかりだった。

16年7月には、大阪市の9階建てビルで、6階付近の外壁からタイルが縦1m・横2mにわたり落下、信号待ちをしていた歩行者の頭に降りかかった。病院に運ばれるも軽傷なのが幸いだった。

管理組合が全てを負担

筆者が創業したさくら事務所には毎日のように、マンションの管理組合からタイル剥落に関する相談が舞い込んでくる。神奈川県にある築3年のマンションでは、9階付近から複数のタイルが落下。ケガ人は出なかったものの、該当箇所以外に、明らかにタイルが浮いているとみられ、急きょ足場を組んでタイルの打診調査を行ったところ、総タイルの20%以上が、いつ剥がれてもおかしくない状態だった。

都内のとあるマンションでは、12年目に一部のタイルが剥落。こちらも幸いケガ人はなかったものの、人に当たれば負傷は免れない。即座に外壁全体の打診調査を行ったところ、全体の18%程度のタイルに浮きが見られた。

所有者で構成される管理組合は、工事の不良だとして売主業者に補修を要請したが、売主は「施工不良ではなく経年劣化によるもの」として応じず、いまだ協議中だ。いずれにしてもこのままでは危険なため、管理組合負担で浮いたタイルはすべて剥がし、新しいタイルを張り直した。

埼玉県のとあるマンションでは、築12年目になって1回目の大規模修繕工事をするにあたり、外壁タイル補修の一般的とされる2~3%程度を補修する予定だった。しかし、いざ工事を始めてみると、20%超のタイルがはがれかかっていることが発覚。追加のコストは5000万円超が見込まれるも、アフターサービス期間や保証期間を過ぎていたこともあり、すべて管理組合の負担で補修せざるを得なかった。

このような状態になっている原因は単純に、必要な液剤が使用されていない、貼り方に問題があるなど、新築時の工事に原因があることが最も多く、私たちの経験では、タイル張りマンションの30%程度が何らかの課題を抱えている印象だ。
次ページ > 裁判に発展するケースも

文=長嶋修

ForbesBrandVoice

人気記事