「凶器」にもなりうる外壁タイル 施工不良に売主の責任はないのか

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特に築8~10年程度のマンションは、ちょうどそのころタイル施工の方法が変わったこともあり、注意を要する。それ以前のマンション経年劣化によるものが多く、それ以降のものは工事が雑であることが原因であることが多い傾向にある。

タイルの浮きが発覚した場合、一般には管理会社を通じ売主や施工会社の責任を追及する。しかし多くのケースで「経年劣化」あるいは「地震の影響」が原因であるなどと結論付け、結局管理組合の負担で補修するケースも多い。

裁判に発展するケースも

実は外壁タイルの施工不良は、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の対象外であり、瑕疵(かし)担保責任の対象外。同法で責任を問えるのはあくまで「構造耐力上、主要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」のみだ。

売り主の責任を追及するのは容易ではなく、裁判に発展するケースも。たとえ裁判に勝ったとしても、補修費用を満額勝ち取れるケースは少ない。ひとえに経年劣化との線引きが困難なためだ。

万が一、タイルが剥落したら、まずはすぐに売り主に連絡し、調査や補修の依頼をしたいところだ。原因究明の証拠として、剥落したタイルは管理事務室などで保管しておきたい。いずれにせよ、剥落の原因は管理組合が立証する必要がある。

国土交通省は外壁タイル剥落事故の多発を受け「定期報告制度」を改訂、外壁タイルの打診検査を義務化している。定期的な調査と報告を怠ると、マンション管理組合は100万円以下の罰金対象となるが、実態としてまだすべてのマンションで調査・報告が行われているわけではありません。

仮に調査や報告を怠っているマンションでタイルが剥落し人災が起きたら、そのマンション管理組合の重大な責任は免れないだろう。

連載 : 日本の不動産最前線
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文=長嶋修

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