カカオは今後、韓国タクシー業界の需要・供給の不均衡の解消や、タクシー料金を利用状況に合わせて最適化する「変動価格制」の研究を進めていくとしている。
韓国ではタクシー業界の反発が大きく、日本同様にウーバーなどカーシェアリングサービスが実質禁止されている。一方で、メッセンジャーアプリなどを運営するプラットフォーマーは、“サービス不在”の合間を縫うようにタクシー配車サービスを拡充。カカオが運営する「カカオタクシー」がその代表格として広く使われている。
ユーザーの利便性と、業界の権益保護の狭間で揺れる韓国タクシー産業だが、最近では新たな火種が生まれた。それは、カカオモビリティがテスト開始するとした「相乗りサービス」の存在だ。相乗りがユーザーの間で広まれば、タクシーの利用額が減少するのは必須だ。
そこで、タクシー業界側は「カカオタクシーの呼び出しを拒否する」と強く反発。今回の発表は、業界との衝突を避け、タクシー業界の売上拡大にカカオが協力するというメッセージだとも解釈されている。
ディープラーニングをベースにした予測モデルは、ユーザーがタクシーに乗り降りした場所、時間、意味などを分析したものとなる。現状では、タクシー運転手が主観的な経験則に基づいて乗客を確保しようとしているが、どうしても需要と供給のバランスが合わない問題が生じてしまう。そこで、人工知能がドライバーの判断を支援するというわけだ。
カカオモビリティ側は、AIを使用することで、需要がない地域で活動するタクシーを、需要が多いと予想される地域に誘導することができるとしている。また、予想される需供に基づいてタクシー料金を調整できる、「変動価格制」も導入できるようになるだろうと説明している。来年上半期中には、一部、関連サービスが開始される見通しである。
日本でも、人工知能がはじき出した需給予測で「変動価格制」を導入できる分野は多いとの話題もある。例えば、大手電機メーカー関係者のひとりは「都市内にデータを取れるセンサーやカメラが普及することが前提」としながら、「大規模なイベント会場やスポーツ施設周辺の駐車場」がその最たる例だと話す。
ユーザーの利便性に偏れば、サービスの担い手が負担を強いられ、最終的にサービス自体の品質が落ちたり、業界が弱体化していく。その事実は、これまでどの業種のプラットフォームにも共通してみられたことだが、人工知能の需要予測はその両者のバランスを最適化できるのか注視してみたい。
連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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