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1970年に情報化社会の到来、さらにはAI技術の進歩までも見通した人物がいた。「ポスト2020」を探るヒントはこのSINIC理論にある!

パソコンもインターネットもない時代、もっと言うなら、ようやくカラーテレビの普及が加速した時代に、情報化社会の到来や、機械・AIとの共生による個人や社会の混乱、そして、さらにその先の未来を予測した人物がいた。1970年の国際未来学会で「SINIC(サイニック)理論」を発表したオムロンの創業者、立石一真(たていしかずま)である。

SINIC理論は、社会に潜在するニーズをいち早く感知し、それに応える製品やサービスを提供(ソーシャルニーズを創造)するために構築された未来予測論なのだが、これまでのところ、社会の様相や人類が抱える問題、科学技術の飛躍的な進歩など、このSINIC理論の「大胆な予言」はことごとく的中している。

SINICとは“Seed-Innovation to Need-Impetus Cyclic Evolution”の頭文字で、「イノベーションの円環論的展開」と訳す。

SINIC理論によると、科学、技術、社会は、二方向で互いに因果関係をもちながら発展していくという。

経営者のみならず全てのビジネスマンにとってビジョンを持つことは重要だが、1〜2年先の未来でも見通すのは困難である。なぜ立石は1970年という遠い過去に高い精度で未来のシナリオを描き出すことができたのだろうか?

ヒューマンルネッサンス研究所の中間真一によると「立石は、欧米を追いかける時代はもうすぐ終焉を迎え、これまでとは非連続の姿の未来がやってきそうだと確信していた」という。

SINIC理論はけっして一人よがりの理論ではなく、経営学者のドラッカーや能率学の草分け的存在だった上野陽一、西式健康法の創始者である西勝造、梅棹忠夫など京都大学の人文系の教授らとの親交を通し、科学技術観(サイバネティックス)、ビジネス観(ソーシャルニーズ)、生命観(ホリスティック医学)の3点から念入りに検証、構築されたものだ。

さらに、SINIC理論を語るうえで忘れてはいけないのが、立石が絶えず持ち続けていた「人には常に進歩する力がある」という人間への絶対的な信頼である。現在我々は「最適化社会」におり、様々な問題が山積みしているという事実は否めない。しかし、これは我々が進化していくうえで避けては通れない道なのであり、人類はいつか必ず乗り越えられるのだ。

中間は言う。「どんなに機械が発達しても、中心にいるのは人間です。今後訪れる自律社会では、人間と機械の融合によって社会は最大のパフォーマンスを生み出すことを目指すでしょう」。

「SINIC理論」と銘打っているが、単なる理論の枠に収まらない。人も企業も今よりもっと幸せになれる、という立石の“will”でもあり、社会へのメッセージなのだ。

文=高橋裕子

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