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2018.12.04 12:00

時価総額で首位奪還 ジンクス破ったマイクロソフトCEOの功績

マイクロソフトCEO サティア・ナデラ(Photo by Stephen Brashear/Getty Images)

マイクロソフトCEO サティア・ナデラ(Photo by Stephen Brashear/Getty Images)

16年前、マイクロソフトが時価総額世界1位という栄冠を失った時、同社がその地位を奪還する可能性はどれほどあっただろうか?

もしあったとしても、ほんのわずかだっただろう。時価総額1位の企業が入れ替わるのは一大事であり、一度陥落した企業が再び栄光の座に戻った例はほとんどない。時代は変わり、テクノロジーは進化する。行き先を見失った企業には、二度目のチャンスはない。

しかし例外もある。マイクロソフトの時価総額は先月30日の取引終了時点で8510億ドル(約96兆7000億円)となり、アップルの8470億ドルをわずかながら上回った。マイクロソフトがトップの座を今年末まで維持できれば、2002年以来のこととなる。

復活を主導した新リーダー

4年半前、サティア・ナデラがマイクロソフトの最高経営責任者(CEO)に指名された際には、多くの人々が驚いた。

しかし、スティーブ・バルマー前CEOが推し進めた携帯電話事業を捨て、リンクトインやギットハブなどの企業買収によりマイクロソフトの原点であるBtoBへと回帰した戦略は、結果を出している。マイクロソフトの株価は3倍になり、先月だけでも7%上昇した。

しかしマイクロソフトが時価総額世界一の座に返り咲いたことは、ライバル2社の衰退によるところも大きい。

アップルの時価総額は今年8月、短期間ながらも1兆ドルに到達したが、その後は1兆ドルを割り込んでいる。先月には、同社の業績が収益予想が下回ったことや、iPhone、iPad、Macの四半期販売台数の公表を止めたこと、同社がイノベーションで遅れを取っているとの懸念を受け、アップル株は16%下落した。

一方で、アマゾン・ドット・コムの時価総額はアップルに約1カ月遅れて一時1兆ドルを超えたものの、終値では一度もこの大台に乗っていない。アマゾンの株価は以降下落を続け、先月30日の時価総額は8260億ドルだった。

転換点

長期的に見たマイクロソフトの転換点は、CEOのナデラによる決断だった。ナデラはクラウドのインフラ市場に注力することで、市場の3分の1を握るアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)との差を詰めようとした。

グロースキャピタル企業オックス(Oxx)の共同創業者でパートナーのミカエル・ジョンソンはこう語っている。「ナデラの素晴らしいリーダーシップは、特に彼がどのように従来のパラダイムを捨てたかに注目すると明らかだ。従来のやり方ではオペレーションシステム(OS)を支配することにこだわっていたが、彼はその代わりにプラットフォームの支配に向け方針転換した」

「これには、サーバーサイドOSとしてのウインドウズはもはや世界を制することができないと認めることが含まれ、さらにはマイクロソフト・アジュールの主要OSとしてのリナックスの採用にもつながった。これは見事な手腕だ」
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編集=遠藤宗生

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